た ページ8
「私、思い出しただけで吐きそうなくらい大嫌いな奴がいて……」
「うん、そいつが木下？」
「と、大川……」
「そいつらのせいで男嫌いになった？」
「うん……」
「それだけ？」
「……」
「違うよね？俺と相葉さんに対してすんごい冷たいこと気づいてないと思ってた？」
ああ、バレてたんだ。
冷や汗がだらだら。
「実は」
「うん」
「二宮くんと木下、相葉くんと大川が似てて……」
「なるほどね、だから俺らが話しかけたら、視線そらして腕を擦るんだ、吐き気がするくらい嫌いだから」
「二宮くんが嫌いなわけじゃないよ」
「そこまで木下を嫌いになった理由知りたい」
「仕事となんか関係ある？」
「ないよ？」
二宮くんがケロッとしていった。
「じゃあなんで？」
「だって気になるもん」
「……」
「無理矢理キスされたりした？」
「おえ」
ガチの吐き気。口を押さえる。
「わ！」
「やめて、ほんとやめて、死ぬほど嫌いな男子に告白されただけでも死ねばいいのにって思うのにキスとか……げほ」
「告白されたの？ウケる！」
「気持ち悪……蝉の抜け殻の味しそう」
「……蝉？」
「小4の時から毎日毎日嫌がらせにあったのよ、トラウマなの、もう思い出すだけで……お陰でイケメン嫌いになったんだから」
「イケメン嫌い……通りで！」
「ん？」
「お前イケメン以外には優しいもんな！」
二宮くんが急に元気になった。
あはは！とか笑ってる。
「笑い事じゃないわよ……」
「大変じゃん、相葉さんイケメンだし」
「……うん」
「うちの部署来たらやばかったね！」
「……」
「でもまあうちの部署は芹香さんが一番イケメンだけどね！」
「女性は好きだよ」
「あ、そっちの人？」
二宮くんが、机にダラーンとなって上目遣いで私を見てる。
「え？」
「男性無理で、そっち行っちゃった？」
「そっち、とは」
「女の人のほうがすきなの？恋愛感情として」
がたん！
立ち上がる。
「ん？」
「からかってんの？」
「からかうわけ無いじゃん、だって俺、いま気になる人がいるんだけど」
「……え、まさか」
「人を好きになるのにその人の年齢も性別も相手の好みも関係ないでしょ？違う？」
二宮くんがケロリとしていった。
そっか、二宮くんはソッチの人なんだ。
思わず、すとん、と椅子に座る。
「……そうだね」
「あ、でも今言ったことは内緒ね」
「言うわけないよ」
「ありがと」
二宮くんの目がうるうると、光った。
初めてちゃんと目を合わせた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
