お ページ7
「失礼します」
「はーい」
企画部の会議室をノックしたら中から声がした。ドアを開けたら、ちんまりとした、猫背が見えた。
くるん。
振り返ったのは木下、じゃなくて二宮くん。
「あれ？相葉さんは？」
「電話を一本かけてから来るとのことです」
「同期なんだしここ二人きりなんだから敬語いらないよ」
二宮くんが私を見て、目を細めて口角をキュッと上げた。
頬杖をついて、んふ、とかすかに笑う。
怖い。
普通の人なら悩殺されるべきところでめちゃくちゃ怖い。
冷静に視線を躱す。
ん？と二宮くんが頬杖をやめて、私の顔をじーっと見た。
「渡瀬さん」
「はい」
「俺のこと嫌い？」
「……」
ああまずい、図星、って顔しちゃった。
「そんなことな……」
「相葉さんがしつこくニノ頑張ろうね、Aちゃんが冷たくても頑張ろうねって言ってた」
「……」
「俺らにはめちゃくちゃ塩対応なのに、同期の澤部には普通に優しいし笑いあってるんだよなぁってことも聞いた」
「……」
「デブ専？」
「違うよ、失礼だよ」
速攻否定する。
「男性嫌いじゃないよね？おじいちゃんに優しくしてる姿も見たことあるよ」
「どこで！」
「俺ら電車一緒だよね」
そういや駅で見たことある。
知らなかったけど同じ路線なのか。
「俺、新市駅」
「そうなんだ」
駅、隣じゃん。近いよ。
「Aは？」
うわ。A、って呼び捨てにされた。鳥肌がぞわあって、立ったけど平然と答える。
「風山だよ」
「近！」
二宮くんがニコニコした。
「今日、一緒に帰ろ？」
「なんで？」
声がひび割れた。
けほ、と咳をしてごまかす。
「あ、ごめんなさい、声ひっくり返っちゃった」
「……」
「相葉くん遅いな」
「……おかしいなぁ」
「何が？」
「芹香さん知ってるでしょ？翔ちゃんの彼女、俺等のかわいい鬼係長」
「櫻井くんと付き合ってるの？」
「有名だよ？知らなかった？」
こくこく頷く。
知らなかった。
「あの人がね、俺は誰の心にもするんって入り込んで俺のために何かしてあげたくなるみたいなとこある、って言ってた」
「大絶賛だね！」
「自分でも、ちょっと自覚ある」
「いい武器持ってるのね、羨ましい」
「だからこそ、初めて感じるこの感じ」
「どの感じ？」
「この手応えのなさ、初めて」
……すごい敏感。
「……一個教えて」
「うん」
「俺が嫌いなの？」
「木下が嫌い……」
「は？ダレソレ」
二宮くんが目を丸くした。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
