ん ページ6
「……というわけで、ニノのデザインで行くことにしたから」
数日後、相葉くんが私にそう言った。
「まって？デザイナー使わなかったの？」
「……コンペで出したやつだよ？いいんじゃないの？先方も気に入ってくれて」
「え？でもここは有名な建築家の方がいいんじゃないの？市のホールでしょ？」
「そうだよ、これから有名になるからいいんじゃない？」
「これから有名になるの？」
「うん」
「それは、……どういった理由で……もしかして、なんか賞でもとった？」
「これからとるんじゃない？」
「じゃあなんで」
「勘だよ、勘」
平然と答えてる。信じられない。
「俺らが担当だからね、がんばろ」
「嫌だ……」
「どうして」
「二宮くんが苦手で……」
「どうして？からかわれたりした？」
「いや、別に……」
「珍しいね、ニノが苦手って。大丈夫だよ、ちょっとツンデレっぽいとこあるけど女の子には基本優しいよ！」
ほんとの理由なんて言えないから言葉を飲み込んだ。
木下に似てるから嫌だなんて言えない。
「……そうだね、私もよく知らないのにそんなこと言って失礼だった」
「うん、Aもきっと仲良くなれるよ！」
「仲良くなれるかな」
「うんうん、大丈夫！」
右に相葉くん、左に二宮くん、目の前に櫻井くんとか松本企画次長とか。大野企画課長も？
うわああああ、想像しただけですんごい怖い。
イケメン怖い。
むかし大学の時、仲良くなった子に、イケメン怖い、と言ったら、まさかまんじゅう怖いじゃないでしょうね、と聞かれた。
『イケメン怖い、って言って嫌がらせにイケメン攻めにされるの待ってたり？』とか嘘つき、って顔で言われて、イケメン怖いって言えなくなった。
その日から、めんどくさいから男性恐怖症、ってことにしてる。
おじいちゃんとか男の子とか、走るより転がった方が早そうなうちの部長とか、壁の色とおんなじくらい顔色が悪くて存在感0の後輩なんかは全然平気なんだけど。
あの、俺を中心に地球は回ってるのかもしれないな、なんて真顔で言いそうな、うちの同期のイケメン俺様軍団には怖さしかない。
イケメンと虫、イケメンと吐き気、イケメンと痛覚、イケメンと嫌悪とか敵意とか、色々イコールで結びついているせいなだけ。
「今から打ち合わせに企画部に行くよ、俺一本電話してから行くから。先行っといて」
はあああ、憂鬱だ。
二宮くんが待ってる、そう思うだけで、逃げ出したくなった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
