21周年 ページ44
二宮くんがジャケットとかばんを持たずに私と個室から出る。
あ、もどるからかな？
荷物置きっぱなしにして、後で……ん？
二宮くんが部屋を出たところの下駄箱の一番下からかばんを取り出して、すぐ近くのカウンター席に置いてあったジャケットを手にとった。
「……あれ」
「こういうことになると思って隠しといた」
「……」
「カバン持って出て行ったら逃げるってばれるでしょ？」
「……もしかして……いつもこんな事やってたり……慣れてる……あやしい」
「ふふーん」
「悪いおじさんだ……」
「そうよ、この世は悪いおじさんだらけだから気をつけなきゃいけないんだよ？なぁーにが生田くんシェアしよ、だよ全く」
「……」
「こないだも！何が熱ある？だよ、お前が今までビクついてたのに動じなくなったからどこまでやったら逃げるか試して遊んでんじゃねーよ！」
二宮くんがタクシーを停めた。
「まだ電車あるのに……」
「……ハイハイ乗って」
押し込められた。
二宮くんが自分のお家の住所を言った。
「……え、二宮くんのおうちに……直接？」
「そうよ、悪い？」
「一旦帰んなきゃ」
「ほらね絶対そう言うと思ったよ、帰しませんよ、帰すわけないでしょ」
「だって着替えとか！」
「そんなんしったこっちゃねー」
「え！酷い！」
「アーアーキコエナーイ」
二宮くんが凄い強引だ。
強引すぎる。
「酷いよ……」
「一晩中お話するんでしょ」
「……うん」
「じゃあ平気でしょ？」
「歯ブラシ……」
「……」
「クレンジング……下着……着替え……おかーさーん……」
「……運転手さん。ちょっと寄り道いいです？」
二宮くんが言った。
「はい」
「ほれ。住所言いなさい」
「いいの？」
「それがあったら泊まれるのね？」
「うん！」
「じゃあ持って来なさい、……お母さんは持って来ないでね」
「優しい！」
二宮くんを見上げたらデコピンされた。
「もっかい言うよ、お母さんは持って来ないでね！」
「お父さんは？」
「……」
「……ん？」
「家族連れてくるんなら俺がAんちに行くわ……俺着替えなんてどーでもいいもん。コンビニでパンツ買うから寄って」
二宮くんがシートに沈み込んでダラーンとなった。はぁーと長いため息。
「あぁ！コンビニでもいいよ？」
「……それ早く言えや！運転手さん！新市駅の東口のコンビニでおろしてください！」
二宮くんが運転手さんにそう言った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
