い ページ39
「暑かったぁ、渡瀬さん背中のファスナーおろしてぇ！はやくぅ」
そう言いながらテテテテと走ってきたのは櫻井くん。
櫻井くんもそのままのほうが絶対よかった。
「早く何か飲まなきゃ死んじゃう！人間の手に戻して！」
たしかに汗だく。慌ててファスナーを下げてお茶を手渡す。
「もういいの？」
カッパの中から私に問いかけて来たのは。
「頭取っていいですよ、暑いでしょう？」
「ん」
はああ、大野さんだ。真顔だ！
あれ？結構涼しい顔してる。
「あれ？平気でした？」
「はぁークソあちい」
「ですよね」
慌てて脱がしてあげたら、ハーって言いながらシートの上に寝転がった。
「つめてぇ、きもちい」
「ふふ」
「そろそろ俺もお願いしてもいい？」
松本さんがすごいキラキラ微笑みながら私に近づいて背中を向けた。
「竹内さん来ましたよ、竹内さんにやってもらってください！」
「このカッコ見せたくねーよ！」
「相葉くん、救出してきます！」
まだ会場あたりで握手したり写真撮ったりしてる相葉くんを見つけて、キリンさんはお家に帰りまーす、とか言いながら撤収。
「相葉くん！お茶！はやく！」
頭を取ってお茶を手渡したら、手はまだキリンさんのまま、両手でお茶をごくごく飲んだ。
汗びっしょり。
「お疲れ様でした」
「うん、ニノは？」
「……あれ？……いた」
会場の隅っこで小さくなってタバコを吸ってる後ろ姿。
近づいて行ったら、チラリと振り返った。
「お疲れ様」
「うん、疲れた」
「すごい上手だった、司会」
「そうでもないよ」
「堅苦しくない楽しい感じの進行って難しいでしょ、さすがだよ、緊張しないの？」
「したよ。歌ってる姿見て、誰かさんが吐きそうになったらどうしようかと思った」
「相葉くんから聞いたのかな」
「聞いた」
しーん。
沈黙。
けど、それは別に嫌な感じじゃなくて。
心地いい。ホッとする。
ドキドキするけど、ホッとする。
「男性、っていうかイケメン恐怖症、治ったの？最近、いろんな奴に手、握られたりしてたでしょ？」
「うん、もう平気みたい」
「もうちょっと一緒に居たいとか、他の奴に言ったりした？」
「言わないよ……」
「イケメン恐怖症治さなくてよかったのに」
「……」
「お前馬鹿だから心配だよ」
「でも、男関係で何か問題あったらすぐたすけに来てくれるって言ってたよね？」
「言った」
二宮くんがやっと私を見た。
「助けてほしいんだけど……今」
「なんかあった？」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
