お ページ14
「その、潔癖で近寄りがたい感じ、まだ新品だからなのね……」
「……新品……」
「ここでいい？」
二宮くんがちょっとおしゃれな洋風の居酒屋に入っていく。
ひとつずつ個室みたいに区切られてて椅子はＬ字のソファ。クッションとかもある。
「カップルシートでいい？話しやすいから」
「……ん」
これがカップルシートか!!!
案内される間に、何気なく他の席を見る。
皆近いよ！そんなくっついたら食べづらいよ！
どきどき。
初めて感じるどきどき。
怖い、じゃなくて。
知らない世界を知るドキドキ。
先に座った二宮くんが手を伸ばしても届かないくらいの位置に座る。
「ビール、生中と、Aは？カクテルもあるよ、ほら」
「ほんとだ、いっぱい！でもとりあえず生中2で！」
店員さんにドリンクを注文して、店員さんが引き下がったら、二宮くんが、くふ、と笑った。
「大丈夫よ、話聞いて欲しいだけだから、怯えないでこっちおいでよ、話しづらいよ」
「……そうだね、ごめん、初めてで動揺してる」
「カップルシートも初めてなの？」
二宮くんがくすくす笑う。酷い。
「……そうだよ……」
「でも相手に合わせて一杯目ビール飲むのね」
「私のことなんてどうでもいいじゃないの！」
さっきから彼氏がいたことないこととかお酒飲んだらどうなっちゃうかとかカップルシート知らないこととか。
今度は一杯目は一緒に来た人に合わせるとかも見ぬかれて色々暴かれていく感じがなんか探られてる感じがする。
「どうでもよくないよ」
「へ？なんで？」
「この掘り出し物掘り当てた感、Aにはわかんないだろうなぁ」
「どういう意味？」
「一緒にいて心地いい相手ってことね。素直で優しくて明るいっていうか」
二宮くんがするん、とネクタイを外す。
喉仏が見えて、ああ、可愛いのにやっぱり男なんだなってドキッとして、慌てて声を出す。
「そんなことないよ、でもあんまり話したことなかったもんね！」
「知らなかった、もっとツンツンしてる子かと思ってた、澤部とかが凄いいい子だよ！って絶賛してたのやっとわかったよ」
「澤部くんもいい人よね、好き」
「それは、どっちの意味の？」
二宮くんが、トロンとした目で、私を見た。
ぞわって来た。
いつもの、ぎゃー！っていう嫌悪感から鳥肌じゃない、本能に訴えかけてくる感じの。
知らない、感覚。
「友達としてに決まってる」
「決まってるの？」
二宮くんが笑いながらおしぼりで顔を覆った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
