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「じゃあ、行ってきます」
「気を付けてね」
その２か月後。
私は宣言通り、仕事をやめて家を引き払って、おにいちゃんのいる大阪に行くため家をでた。
兄と付き合ったってだけで、周りの反応がひどい。さーっと引くのがわかる。
だけど。
お父さんは、人生どんなことがあるかわからないんだから、好きなように生きなさい、生きてさえいれば、人は幸せになれるんだから。
そういった。
私が亡くなったお母さんに面影が似てきたことが、余計にそう思わせるみたいで。
お母さんも、後悔しないように生きなさいって言った。
たった一度しかない人生なんだから。
どうせなら、笑って過ごしてほしい、と。
結婚なんかどうでもいいの。
そばに居たい。
離れたくない。
そう言ったら、好きにしなさい、といった。
『……こっち来たら？……誰もいないし』
おにいちゃんの言葉に、私はためらいもなく全部を捨てた。
新大阪から乗り換えて、大阪駅についたら、おにいちゃんが待ってた。
「ね、これお前が好きだって言ってたアイドルだよね？」
構内の看板を指さしておにいちゃんが言った。
「きゃー！写真とっていい？」
「だめ、行くよ」
手を、つなぐ。
久々。何年振り？
しかもここでは誰かに見られるって心配も全くない。
「久しぶり……」
「何が」
「手がおにいちゃんだなあって思って」
「……早く帰ろ、早く帰って……」
おにいちゃんがそこまで言って、くふ、って笑った。
「ん？」
「ねえ、お前、あの家に来た妙な男となんかした？」
「なんかって？」
「……なんかって言ったらあれよ、キスしたり……」
「……」
「ん？」
「私、おにいちゃんしか知らない」
「まじ？そんなモテなかったの！ヤベェ」
おにいちゃんの背中をばし！っと叩いたら、いって！って言いながら笑ってる。
「お前さ、すっげミーハーで好きなやつとかころころ変わるのかと思ってたけど、そうじゃなかったんだな、へえ」
「……どうしてそう思われてたんだろう……」
「髪型もなんも変わってないし本当は一途だったのね」
「これはもうおにいちゃんに見間違われないようにするためだよ」
おにいちゃんが、あは、って照れくさそうに笑った。
つられて笑う。
「あ、そうだA」
「ん？」
「おにいちゃんってもうやめよっか、悪いことしてる気になる、そういうのも萌えるけど」
「じゃあ先輩？」
「ま、いっかそれで。……早く帰ろ」
おにいちゃんが、私の手をぎゅうって、握りしめた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
