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お正月、おにいちゃんが実家にいるから避けてたけど、帰らないわけにもいかず電話したら。
今はおにいちゃんが松本くんの家に泊まりに行ってる、と聞いてその隙に新年のあいさつをしに実家に帰ることにした。
痩せたね。
綺麗になった。
おばさんがそう言って、お父さんが目を細めた。
そうだ。
私は22歳。
23歳だったお父さんが、亡くなったお母さんにプロポーズした年。
その数年後。
亡くなるとも知らずに永遠を誓った。
お父さんが、ふと私に聞く。
「お前、どこも悪くないよな？」
「え？」
「いや……」
お父さんが不安そうにした。
私、亡くなった、お母さんに似てきたね。
写真で見るお母さんと私、よく似てる。
お前も突然いなくなるんじゃ。
お父さんの不安はわかる。
「私、検診とかちゃんと受けてるから大丈夫よ、貧血で毎回引っかかるけど」
「そっか」
ホッとしたみたいに、笑う。
ギクシャクしてる。
居心地が悪い。
「彼氏出来た？」
おばさんがまた聞いてきた。
「いい機会だから言っとくよ」
「ん？」
「私結婚しないから」
「……」
「ごめんね」
あは、って笑ったらお父さんとおばさんが絶句した。
「どうして……」
「私おかしいのかなぁ、人を好きになるって感覚が欠落してて……」
「……」
「どんな素敵な男の人みても、なんとも思えないんだ、無理して好きじゃない人と一緒になる意味わかんないし」
「……」
「そばにいる人のレベルが高すぎて目が肥えちゃったかなぁ？」
笑いながらそう言ったらおばさんが微笑んだ。
「お父さんと和……」
そこでまた二人が絶句した。
さっきからずっと様子がおかしい。
「どうしたの？」
「和とは会わないの？あの子大阪から久しぶりに帰ってきてるのに」
「大阪？」
「……え、それも知らないの」
「なにが？」
「赴任先……大阪よ？」
私はおにいちゃんのことを、何も知らない。
「……そう。元気そうだった？」
「まぁね」
「よかった」
「寂しそうだったわ」
「……」
「Aちゃんと同じ顔してた、何かを悟ったみたいな顔……」
おにいちゃんは、就職してすぐに迎えには来てくれなかった。
それが、答えだ。
一瞬期待した私は馬鹿だ。
「……帰るね」
「え？もう？」
二人が戸惑ったような顔をする。
この世のどこにも私の居場所はない。
安心できたこの家も。
カーテンの色が違う。
ラグマットの色も違う。
ここに、私の痕跡はない。
「お邪魔しました」
無意識に、そう言っていた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
