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冬に入るころには、もう大学も決まって、カリカリしてる周りの子を横目に、私はのんびり過ごすだけの日々。
みんなが正月返上で勉強してるのに、私はテレビを見て、おにいちゃんが帰ってくるって聞いた日は、同じように推薦とかＡＯ入試なんかで進路が決まった子と初詣に行ったりした。
おにいちゃんを避けてることは、おにいちゃんだけじゃなくて、両親も気づいてるみたいだ。
だけど、もうどうすることもできない。
一緒に居ても、つらいだけ。
おにいちゃんにちょっと似てるアイドルにきゃーきゃー言って、彼氏がどうしていないのか、って疑惑をそらすことも覚えた。
もうすぐ卒業の、２月。
みんなが一番カリカリしてる時期。
私はほしい本を探して、久々に、学校帰り櫻書房に居た。
マフラー忘れちゃって首がすーすーして寒い。
目の前のお客さんが、平置きしていた本をいきなりドサドサ、と倒した。
「大丈夫ですか？」
おばさんが、私のせいじゃないわよ！なんて言いながら、そそくさと逃げて、苦笑い。
仕方ないなあ。
私が本を片付けて、ほしい本を手にレジまで行く。
何気なく外を見たら、雪が。
はらはらと雪が舞ってる。
雨の予報が、雪に変わったんだ。
どうりで寒いと思った。
こんな日にマフラーを忘れるとか最悪。
買ったばかりの本を抱きしめて、外に出て、赤い傘をぽん、と差す。
白い息。
グレーの空。
一歩足を踏み出したとき。
「待って、その赤い傘の子、待って」
後ろから声がした。
「……え？」
くるりと振り返ったら、おにいちゃんが私を見て、慌てて走ってきたみたいに、はあはあ、と白い息が漏れた。
「ねえ、待って」
「……」
「同じ、学校の子、だよね」
何言ってるの、おにいちゃん。
そう言おうとして、突然おにいちゃんが何を言いたいのか、わかった。
ねえ、そんなに？
そんなに戻りたいの？
「……なんてね、」
おにいちゃんが自嘲した。
やめないで。
何も知らないふりで続けてよ。
「……はい、二宮先輩、ですよね？知ってます、松本先輩のお友達の」
おにいちゃんが目を見開いた。
は、ってちょっと笑って、小さく咳をした。
「……名前、……確か、A、って呼ばれてた」
「はい、松本先輩は中学の時の先輩で」
「潤くんのこと、好きなの？」
「違います、まじめでまっすぐで彼女に一途で。あこがれています」
「そうなんだ」
おにいちゃんが、ふわ、って微笑んだ。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
