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それからも、学校でばったり会ったら、私が気付くより先に気づいて目をそらされた。
避けようとしてるのがわかる。
学校の外でばったり見かけたとき、楽しそうに笑いながら相葉先輩と歩いていて、笑ってる、それだけでちょっと嬉しくて泣きそうになったりした。
体育祭も文化祭も、おにいちゃんを遠目で見て、元気そうにしてる姿を見てはため息を吐く。
完璧な、片思い。
しかも、どうやら、絶望的みたい。
私から見る限り、おにいちゃんは私のことなんてもうどうでもよくなったように見えた。
一度だけ、おばさんにおにいちゃんのことを聞いた。
『おにいちゃんの連絡先教えて』
『……ごめんね』
おばさんは、たったそれだけを言った。
おにいちゃんの話は禁句なんだ。
それから、この家ではおにいちゃんの話はできなくなった。
10月の、衣替えの季節。
冬服になるだけで、学校が少し重く感じる。
白いブラウスにリボンとグレーのスカートの夏服と違って、学校全体が紺色で染められる。
秋の憂鬱さと相まって、暗く感じるのはどうして。
月に一度の朝礼で、長袖でブレザーを手にもって歩いてるおにいちゃんを見かけた。
え？まって。
どうして？
そういえば、おにいちゃん、制服の冬服、いつの間に取りに帰ってきたの。
９月入るまで、家にあることは私知ってた。
おにいちゃんの部屋だった場所のクローゼットに、制服がかかってたもの。
それを眺めて泣いてたんだから、間違いないもの。
慌てて家に帰って、おにいちゃんの部屋に入ってクローゼットを開けたら、おにいちゃんの服が全部なくなってた。
いつの間に？
一人でもんもんとしながらコンビニに行こうと外に出たら、お隣のおばさんが私を見て、こんにちは、って声をかけた。
「あ、こんにちは！」
「和くん最近見ないわねえ」
「ああ、受験勉強に集中したいからっていま親戚のおうちに居て」
おばさんがそう言ってるのを前に聞いてから、それが正しい答えなんだと思い込んで、同じように答えてる。
おにいちゃんがどこにいるか、私はまだ知らされてない。
「この前お久しぶりです、って挨拶してくれたっきり。寂しいわ、ファンだったのに」
「……この前？」
「９月末かな？そういえば、平日だったわね……学校休んでたのかしら」
「……ああ、そうなんです！じゃあまたね！コンビニ行ってきます！」
「最近物騒だから気を付けてね！」
「はい！」
手を振ってお隣さんと別れて、大きなため息が出た。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
