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お風呂のあと、居間の大きいテレビでゲームしてみたかったっておにいちゃんが言って、部屋からゲームを持ってきた。
「これからも、いつでもやればいいでしょ」
「……そだね」
「ここに置いておいたら?」
「……テレビ権、基本Aだから俺ゲームできなくなっちゃうじゃん」
なんて軽口たたいて、くっついて、夜通しずっとくだらない話とかして、
……時々思い出したみたいに、唇を重ねて、そんな風にだらだらと、時間を過ごした。
どうやって過ごせばよかったんだろう。
どれが正解だったんだろう。
手が痛い私のこれ以上つらい思いさせらんないって心に決めてるおにいちゃんと、
はじめての両想いに浮かれきって、キスすることが精いっぱいの私。
一枚のタオルケットにふたりでくるまって、ソファでお互いの頭と肩を枕にして、うとうと。
ずっと、手はつないだままで。
おにいちゃんときっとこんな風に、生きていけると思った。
その夜、人生で一番幸せで、一番無駄な時間の使い方をした。
次の日、朝から二人で洗濯とかご飯とか、病院とか、
全部全部、トイレとお風呂以外、全部一緒に過ごして、夕方、おとうさんから7時くらいに帰る、って電話があった。
「7時だって」
電話を切って振り返ったら、おにいちゃんが、あと二時間、って小さくつぶやいた。
「ん?」
「A」
電話を切った私の後ろから、おにいちゃんがふんわり抱っこしてきた。
「なに?」
振り返ったら、おでこを、こつん、ってした。
「なにー?」
「A」
「……え?」
様子が、違う。
「なに、おにいちゃん……」
「最後に、なんもしないから、……抱っこさせて」
「……え?」
「キスしたのは、お父さんに内緒ね」
「……うん」
「手は出してない、って言い切れるように、我慢した自分をほめてあげたいよ」
「どういうこと?」
ずるずると、滑り落ちるように、私を抱え込んでフローリングに座り込んだ。
「ちゃんと言ってないかもしれないから、もっかいちゃんと言う」
「うん」
「俺、多分、初めて会った時から、ずっとAのこと、好きだったよ」
「……」
「これからもずっと、大好きだよ」
目を上げたら、おにいちゃんが、ふんわりと笑った。
「それだけは、絶対、わすれないでね」
「なんか、もういなくなるみたいな……」
「うん。ごめんね、もう決めたから」
「……え」
「ごめんね」
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作者名:よしの | 作者ホームページ:
作成日時:2016年5月31日 0時