16 ページ17
テレビを見終わって、やっとお風呂に入ってパジャマに着替えた。
一番部屋着っぽいやつ。
髪を乾かして、テレビを見てる和くんの後ろをさっと走り抜けて、
部屋に入ってせっせとベリー系の香りのボディミルクを塗って。
全然気持ちが落ち着かない。
これ、なれる日が来るのかな。
居間には、和くんしかいない。
おばさんは疲れたみたいで早々に寝室に行ったみたい。
お父さんは今お風呂。
居間に二人きりとか、なんだか気まずい。
パジャマだし。
そろーりと、キッチンに行ってお水を飲んでたら、和くんが私に気付いた。
そりゃそうだ。
カウンターキッチンになってて、リビングとつながってるんだし。
「あ」
私を見て、和くんが目をぱちくりした。
「髪……」
「え？」
「ちがう……」
学校では、たれ目が嫌だからいつもポニーテールかお団子にしてきりっとさせてる。
たまに寒いときとか髪を下して学校に行く時もあるけど、和くんは初めて見たのかも。
「似合わないでしょ、だからいつもまとめてるの！」
「……あれ？」
「なに？」
「……お前だったの？」
「何が？」
「絆創膏……」
和くんが、不思議そうに首を傾げた。
「え？絆創膏？」
「あのさ、お前去年かな、本屋で指から血をダラダラ流しながらレジ売ってる男に絆創膏あげてたでしょ」
「ああ！あった！本に血がついちゃうからこれどうぞ、って。びっくりしちゃったよ、ケガしてるとこにガムテープ貼ろうとしてて……」
「……」
「近くにいたの？」
「うん」
「段ボールで手、切ったことある？紙とかで手を切ると一瞬痒いみたいな感じがしてあとからすっごい痛くなって……」
「かみ……」
「器用そうだもんね、和くんはなさそう」
ん？いつもほどのキレがない。
いつもなら、お前のことだから絆創膏何枚あってもたりないよね、とか言ってきそうなのに。
「髪」
「え？」
「髪、下してる方が似合ってんじゃないの？」
和くんが、それだけ言って、またテレビを見た。
そうかな。
それなら、明日下していこうかな。
「じゃあ、たまにはそうする、明日体育ないし」
「ん」
「今日はお疲れさまでした、おやすみ和くん」
「……おやすみ」
あら。優しい声。
居間から出ていくとき、何気なく振り返ったら、ばち！っと目があった。
ちょっと笑いかけたら、早く寝ろ、って小声で言った。
ちょっと意地悪。
だけどソファの上でクッション抱きしめててやたら可愛い。
私の、お兄ちゃん。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4375人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なるちゃん(プロフ) - うわーん！ 涙涙、、、 カズくんがお兄ちゃんでよかった！！ (2018年1月29日 10時) (
レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
こずえ(プロフ) - こんばんは。いつも読ませて頂いてます。年の近い兄ってこんな感じなのかなって想像しながら読んでます笑 冷たくしてしまうお兄ちゃん…素直じゃないですね〜 これからどうなるのか楽しみです！ (2016年5月13日 23時) (レス) id: bf5dbd1af4 (このIDを非表示/違反報告)
るこ(プロフ) - こんにちは♪お兄ちゃんたらっ///本当に素直じゃないんだからと、悶ております♪今度はいつ、甘やかしてくれるのかしらん♪ (2016年5月13日 14時) (レス) id: c20acea42a (このIDを非表示/違反報告)
梨沙(プロフ) - お兄ちゃんのバカ！でも好きで好きで死にそうです。今日はどんなウィンクで殺しに来るのかと♪(´ε｀ ) (2016年5月13日 13時) (レス) id: e385bf4ae4 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - 我のアホな行動、言動にズドーンと堕ちてた、けど、やっぱり読みたくなってしまう…(T＿T)ｼｭｰﾝ (2016年5月13日 13時) (レス) id: 76d9f58a12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年4月22日 14時
