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「ちょ！櫻井くんがせっかくか弱い女の子扱いしてくれてるのに台無し！課長うるさい！」
「こら！誰に口きいてんだ！」
「ねえ、櫻井くん？」
唖然として会話に入れない櫻井くんに、ちょっと微笑んで話しかけてみた。
「……チーフは可愛いです」
「……こいつが？お前その大きな目玉ちゃんと見えてるのか？」
「課長もかっこいいし……」
「見えてるようだね……じゃあ自分の顔はどう見えてる？」
「小動物みたいな……？よく言われます、リスとか……」
「うん、目は悪くないようだ、女の見る目がおかしいんだな、よし、じゃあ今度可愛いお姉ちゃんがいっぱいいるお店に連れて行ってあげよう」
「ホントですか？やったぁ！」
「おお！いいぞいいぞ！いい顔だ！」
「やる気出てきたー！」
なんだそれ。
あ！
「すみません、運転手さん？ちょっとだけ、そこに停めてもらっていいですか？」
「はい」
車を停めてもらってタクシーを降りた私に櫻井くんが小さく「えっ」と声を出した。
課長はそのまましらんぷり。
慌てて取引先の事業本部の人とビル管理会社と作業してくれる工事責任者の人にお菓子を買う。
戻ってきたら、櫻井くんが私をじーっと見た。
「ん？」
「お菓子……」
「ああ、初顔合わせだから。課長経費でお願いしますね」
「了解……俺のぶんは？」
「ご自分でどうぞ」
「ちぇー、おれあの店のどら焼き……好きなのに……」
「と言うと思ってました。買ってますよ」
「お！くれ！」
「後で！」
「よーし！やる気出てきたー！」
課長可愛い。
櫻井くんも課長みたいな課長になるんだろうな、きっと。
ふふ、って笑ってちょっと振り返ったら、櫻井くんが私をジーッとみた。
ん？
目で問い返したら、はは、って短く笑った。
「勉強になります」
ぐはあ……かわいい……
悔しい。
なんかいい匂いするし。
肌はピカピカ、唇もぷるぷるだし。
スーツ狭そうに着てるのがたまらん可愛いし。
はっ！
胸筋？が邪魔なんだ！
女も胸が大きいとスーツ着たら襟が開いちゃってだらしなく見えちゃうもんね！
シャツinしたら胸ドォーン！って見えるし！
さては櫻井くん、起立！気をつけ！礼！のときの気をつけが甘いというか猫背っぽく立ってるのって！
胸を反らせると腕が浮いちゃうからなんだ！
ひょえー。
タクシー降りたらちゃんと観察しなきゃ。
……は？観察しなきゃってなんだ私。
私キモイ！
ああ、頭痛がする。
こめかみに手をやって目を閉じる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
