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櫻井くんとおててつないで帰ってる。
手汗を気にしてるのかな、
反対側の手をスーツで擦るみたいな仕草を。
「ちょっとごめんね」
櫻井くんの手汗なら浴びてもいいくらいだけどそわそわしてるのが気になって一旦手を解く。
「……」
櫻井くんがえっ、と戸惑った風にした。
さて解いた手はどうしよう。
とりあえずスマホを取り出してみるか。
『帰った？』
大野くんからライン来てる。
『体調悪いから帰るね、お疲れ様』
櫻井くんがさり気なくハンカチで手汗を拭ってる姿を見て、可愛いぜ！って叫びたいのを我慢しながらお返事。
スマホをかばんに戻して櫻井くんを見る。
「櫻井くん、メールとか……どこ行った？とかメール来てない？二宮くんとか……」
「そんなことどうでもいい」
そう言ってまた私の手を握った。
ぐふ。
あ、いけない。
私課長の件で落ち込んでる女設定だった！
「もうすぐ、私のうちつくんだけど」
「……」
櫻井くんの眉がぴくりと動いた。
「近くのコンビニ寄ってビール買ってく？」
「まだ飲むの？」
櫻井くんがホッとしたみたいに笑った。
「食べ物とかなんにもないよ、食パンくらいしか」
「……」
「ああいう場所ではあんまり食べられなかったでしょ？なんか買ってく？」
「……うん……」
「すみません、その先信号左折したとこのコンビニで下ろしてください」
「はい」
タクシーがコンビニの前で停車した。
3000円くらいかかった。
支払おうかどうしようか迷ってる櫻井くんを見てるのが楽しい。
「櫻井くんはあとで帰りのタクシー代出さなきゃなんだから。帰るんでしょ？」
そう言ったら、『……あ』ってちょっと残念そうな顔をした。
チラリと時計を見たらまだ10時になったとこ。
いつもならこの時間まだ残業とかしてても全然おかしくない。
「何買う？」
そう言いながらコンビニに入る。
「カゴ持つよ」
櫻井くんのかごを持つ姿がキュート過ぎる。
いちいち萌える。
スーツのジャケットを小脇に抱えてカゴ持ってかばん持ってたらどうやってカゴに商品を入れるのよ。
「おにぎりとか、食べる？」
並んでお買い物して私が入れたらいいんだ！
こういうの久々すぎて何か色々忘れてる。
「おにぎり、って気分じゃねーんだよなぁ」
「おそばもあるよ、好きでしょ？」
「……」
櫻井くんが私をちらりと見た。
「知ってるんだ……」
櫻井くんが嬉しそうに、微笑んだ。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
