可愛いは禁止！【SS】 (ページ2)

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……しつこいようだが、櫻井くんは可愛い。

年下には興味がない私でも、ついデレデレしちゃうくらいかわいい。

「チーフ、昨日はありがとうございました」
データのこと、みんなには内緒よ、と言ったからなんだろう、突然小声で耳元に話しかけてきて飛び上がった。

耳を押さえて見上げたら、ぐふっ！っと吹き出してる。

「可愛い」
「何か用？」

可愛いと言われたこととか耳元で囁かれてゾクッと来たこととか色んな感情が一気に溢れてつい冷たい態度とっちゃった。

「これ、お礼です」
小さな袋を手渡される。

中を開けたら美味しいって有名なとこのラスクと私が残業中にこっそり食べてるマーブルのチョコのお菓子が入ってる。

「なにこれ」
「ラスクはいただきものなんですけど食べきれないから。チョコはコンビニで買ったんですけど……好きでしょ？」
「……好き……」
「はは」

櫻井くんが私を見下ろして、くすぐったそうに笑った。

「チーフ可愛い」

なんでこんな可愛い可愛い言われてるんだ私。

同期の大野くんとかには可愛くねー！とかさんざん言われてるのに。
あと櫻井くんと同期の二宮くんとかがコッソリ、私を鬼チーフとか呼んでることも知ってる。

「馬鹿にしないで」
「すみません」

悪びれることもなく櫻井くんが謝って、私を見てニッコリ笑った。

「昨日は早く帰りたかったので助かりました」
「……デート？」
「まあ、そんなとこです」

そう言って、私をまた見下ろして、くすりと笑った。
「嘘です。野郎同士でサッカーの代表戦の試合をライブビューイングで見る予定だったんですよ！」
「遅刻したでしょ？」
「後半には間に合いましたから！」

そう言って私に、ぐ！って親指立ててデスクに戻っていく。

おーい、櫻井くん！
はい！
これ頼む！
はい！

とか。また頼まれてるよ。
でもいい返事だし瞬発力はあるしやる気あるしなにより可愛いし。

可愛いのは関係なかった！
しっかりしろ私！

あああ、でも。
なんだよう。可愛いじゃないの。

休憩時間にラスクを食べようと袋から取り出したら、袋の中に、
『USB、ありがとうございました櫻井』
って書いた付箋がついていた。

ああ、もし外出とかしてて話しかけるチャンスが無かったら置いておこうと思ったのかも。

付箋を眺めて、スケジュール帳に挟んだ自分にどん引きした。
密かに可愛いって想うくらいいいじゃない。

誰にも迷惑かけない！
なんて自分に言い訳。