74、私を消して ページ4
「……わかんない、消えるんじゃない？」
「消えちゃうけど、いい？」
「……消して」
「……」
「和に、消してほしい。他の人じゃなくて、和が私を消して」
え？
私、何言ってるの？
「過去に戻らないで、こっちの世界でAのこと、幸せにしてもいい？」
「……うん……うん」
未来の私が。
肩を震わせた。
すすり泣く、声。
「好きだよ、和」
「……」
「初めてあった日からずっとずっと好きだった、ずっと、今でも」
「……」
「愛してるよ、和」
和が、たまらず、って感じで靴を脱いで中に入った。
未来の私を見下ろす。
「A……」
「ああ、和だ。和会いたかった」
「……」
未来の私が泣いてる。
これは、嬉し泣きだ。
わかるよ、だって、私だもん。
「ずっと待ってた」
そう言って、未来の私は。
和に、トランプを見せた。
「……それ」
「……あげないよ、これは、宝物」
ふふ、と、彼女が笑った。
「じゃあね、現在の、和に宜しくね」
「伝言ある？」
「……ああ、いっこだけ。この浮気野郎って言っといて？」
未来の私が楽しそうに笑った。
「いこ、和」
「ん」
ドアから出る。
その瞬間、少し振り返ったら、未来の私が少し見えた。
柔らかく微笑む、穏やかな表情。
あの人はだれ。
呆然と立ちすくむ私の手を、和が引っ張った。
「皆待ってるかも。帰ろ」
和が、さっき言ってくれた、
『Aのこと、幸せにしてもいい？』って言葉が耳の中にこだまする。
浮気野郎って？
浮気されるのかな。
でも、別にいい。
いま、そうやって言ってくれたことがもう。
私、それだけで一生分の幸せもらったようなもんだよ。
外に出て暫く歩いて、ふと公園の時計を見る。
「……もうすぐ4時だねー」
「うっそ！昼飯食うの忘れてる！」
二人でファミレスに入って、ハンバーグを食べて、ああ、幸せだーって。
うん、未来なんていらない。
今目の前に和がいる。
それだけで、もう幸せで。
平居先生の豹変ぶりは、恐らく潤くんを輩出したからだな、って話とか。
櫻井くんの切れ味の鋭さは政治家より弁護士のままのほうがいいんじゃ？とか。
無責任なことばっかり話して、手を繋いで大野くんの別宅に戻ったら、
櫻井くんが仁王立ちになって、私たちにキレた。
「遅い！何してた！」
ああ、まだ守ってくれようとしてるんだ。
和と目を合わせて、笑いあった。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
