93、舞台 ページ23
ある日。
和が舞台見においでよ、って言った。
和は、学校で、舞台の曲の編曲とか、音出しとか、音響、照明なんかの、総合演出とか、舞台監督の方にシフトチェンジしていた。
評論家とかも来るような大きな舞台で、和はいつも通り、演劇科の裏方さん。
和は、入学した当初から、プロンプターと言って、音を取りづらい曲の、歌うタイミングのきっかけなんかを教えたり、
舞台の上で台詞が飛んだとき用に、袖でそっと教える役目をやってたから、その流れで総合演出、舞台監督みたいなのを面白いと思えるようになったと言ってた。
なんとなく、見に行ったら、
舞台に、和が立っていた。
なんで？
なんで和が。
裏方に徹してるはずの、和がなぜ？
最近は歌を歌うよりもオペラとかミュージカルの裏方ばっかりだったのに。
その日の夜、和の部屋で和の帰りを待っててきいた。
「どうして和が演者だったの？」
「あれね、結構主要な役どころなんだけどさ、演じる筈の奴が、事故って入院して」
「でも、何で和が？他いなかったの？」
「だってさ、あいつの代わり、あわててオーディションしたけどだれも完璧に台詞はいってるやついなくて！絶対失敗させらんない大事な舞台なのに」
「……」
「普通見てたら勝手に覚えるでしょ？何日やってたの、バカばっか」
「……なるほど」
「今まで演った舞台の全部の台詞も歌も歌えるよ、オフィーリアの錯乱シーンとかも」
「ハムレットの？」
「うん。『ご親切な言葉、ありがとう。さあ、馬車を！おやすみなさい、みなさま、おやすみなさい。優しい方たち、おやすみなさい、おやすみなさい』ってね？」
和が、まるでとっても愛らしい女の子のように微笑んで、でも視点が定まらないまま、そのセリフを言った。
ぞわ、っと鳥肌。
「え？」
「ん？」
和が楽しそうに微笑んだ。
よかった、元に戻った。
「役者になるの？」
「やだよ」
和が柔らかく、微笑む。
けれど、その母校の舞台をたまたま見に来ていた有名な舞台監督が。
和を見て、信じられないくらいの存在感だった、あれが初めて？信じられない、って和を大絶賛、した。
しかも、代役で出たから、あの演技と間のとり方は、入院してる奴と全く一緒だと聞いた監督は、自分の舞台の台本を和に読ませた。
流石に断れなくて言われるがままに演じて、そして、監督の舞台のオーディションを受けなさい、と言われた。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
