82、仲間っていいな ページ12
「夢が叶ったのに、なんだか辛そうだよ」
「……」
「せっかく、ダンサーになれたのに」
「……」
大野くんが、遠く、遠くを見た。
「……踊りたくて踊ってるのか、踊らされてるのかしらないけど。人はね、必要とされて、初めて生きてるって実感が湧くんだよ」
「……」
「おまえなんかいらない、なんていわれたら、……立ってらんない」
「……」
皆が、まだ寝てる。
昨日遅くまではしゃいでたからだ。
ブーンブーン。
携帯のバイブ音がする。
大野くんが、携帯を見た。
「あれ、翔ちゃんだ……もしもし……え?なんでしってんの」
大野くんが、目を丸くした。
「……うん。わかってるってば。へーき。っていうか、早いな、なんでわかったの」
「……」
「んだよー、わかってるってば。ん。じゃあ……え?今晩?……なら、いく。じゃね」
ぴ。
携帯を、切る。
「ね、A」
「ん?」
「あ、今度はメール。相葉ちゃんと……あ、今度は、まちゅ潤」
「……」
「はは。……どっかで見られてるのかなってくらいだよね」
「どうしたの?」
「怪我したんだろ、って。智くんはプロ意識高いから多分落ち込んでるだろうなーって。だから飲みにいこって、翔ちゃんが」
ああ、未来でも、みんな。
心はつながって。
「……相葉ちゃんも……え?まちゅ潤、アメリカかえるの、一日ずらすってー。どんだけ?おれ愛されてるなー」
「……うん」
「……くそー。なんか泣きそ……」
あはは、って笑って、大野くんの目がきらきらした。
「……みんな、部長のことが、大好きなんだね」
「……」
「みんなが、みんな、お互いのことが大好きなんて、すごいことだよ、奇跡だよ」
「ああ、そうだね……え?A、なんで泣いてんの!」
大野くんが、私の頭をやわく、叩いた。
「たたいたなー」
「なくなー」
「あは……」
「……確かに、そうだよ。これは、醒めない夢だな、うん」
「……」
「仲間がいる。それだけで、いくらでも強くなれる。……仲間っていいな」
「……そうだね」
「みんな、誰かに支えられてんだ、家の人や、友達や、恋人に」
「うん」
「ひとりじゃない、いや、ひとりにしてくんないんだもん」
きし。足音がした。
「びっくりした。Aいないから、消えたのかと思った」
「和に黙って行かないよ……」
「やっぱ、なかよし」
大野くんが楽しそうに笑う。
その時。車の低いエンジン音と、バタンとドアの閉まる音がした。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対! (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役!(;▽;) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よしの | 作者ホームページ:
作成日時:2015年6月14日 8時