５、ドッキーン！ ページ5
「我々が抜けた、ということは、櫻井くんたちは、元オーケストラ部だったんだ、で、戻ってきてよって相葉くんが言ってるのね？」
私がそう言ったら、初めて櫻井くんが、ホントの笑顔を見せた。
「しかも、元部長だったのね、櫻井くん。ここでは副部長。部長は、大野……さん」
「俺達全員君と同じ学年だから、２年。タメでいいよ、どうぞ」
櫻井くんが話してるのを皆が、それぞれのことをしながら聞いてる。
二宮くんはトランプをずーっといじってるし、大野くんは雑誌を見てる。
表紙に大きく釣り、って書いてる。
「人数が少ないですね……」
「音を合わせるのが好きならオケ部に行くべきだ。ここではろくに合奏も出来やしない、君が望むあの醍醐味はここでは得られない」
「はい」
「平居先生が、事情が事情なだけに、オケ部ではなくブラバンという形で、俺らの移籍と抜け道を作って内申点の底上げを計ってくれようとしてる」
「はい」
「但し、うちのオケ部は有名だ。なのにブラスバンド同好会ってことになるとそこで疑問に思う人も中にはいるかもしれない。それなら」
ガチャ。
扉が開いた。
もう一人、男の子が入ってきた。
「おつかれ……ん？」
「松潤、俺きょーからブラバンでもいい？」
相葉くんが言う。
「俺らが辞めるとき一緒に辞めりゃ良かったじゃん。あの子達庇ってたからてっきり」
「だってかわいそーじゃん……」
「一番かわいそうなのはオレだろ！」
松本くんってこの人だ。
らんちゃんがよろしくね！って言ってた人だ。
大きな目と小さい顔。
キリリと引き締まった眉に大きめの口。
とにかく、彫刻みたいな美形。
ふわふわの前髪が、風でふわっと揺れた。
バチッ！
目が合った。
「あら……シュッとした……」
「その反応、初めて見た！」
私のことをジーッと見てた二宮くんがぷくく！って、笑った。
「ドッキーン！ってならないの？」
子犬みたいな目で私を見てる二宮くんにドッキーン！ってなってるんですけど。
「ギリシャ人みたい」
「ぶふ！」
「会ったことないけどイメージで。気に触ったらごめんなさい」
「……ぷは！」
二宮くんが、楽しそうに笑って、そして、言った。
「おれA、合格ね」
どういう意味だろう。
「俺からは一つ質問。君の座右の銘を教えて」
「実るほど頭の垂れる稲穂かな、です」
「はい、合格」
櫻井くんがニッコリ笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1842人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みゅう(プロフ) - 解放ありがとうございます。涙。だいすきです。。 (2019年10月20日 22時) (
レス) id: 94596ebf5a (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - この学校に通いたいです。。こんな青春したい。。よしのさんのお話すごいツボです〜 (2016年1月6日 22時) (レス) id: 8994b070b7 (このIDを非表示/違反報告)
RAITO - こんにちは!!RAITOと申します。読ませていただきました。今までとは少し違うテイストの物語でわくわくします《*≧∀≦》青春の甘酸っぱい香り!! (2015年6月27日 11時) (レス) id: 485e47e579 (このIDを非表示/違反報告)
ちょりん(プロフ) - 高校までの6年やってたユーフォが出て浮かれてたら、最近始めたコンバスが！しかも担当が！勿論話も楽しくて(><)何があるのかドキドキしてます！ (2015年6月10日 1時) (携帯から) (レス) id: 83acbf6b6f (このIDを非表示/違反報告)
ぽにょか(プロフ) - 青春、ＳＦ、長編、どんと来〜い♪ 楽しいです。切なさもありつつ、和の避けたかった未来、それでよかったのか和と、分からないまま 和を叱咤激励、主人公ちゃんを応援しながら日々過ごしてます。 (2015年6月9日 23時) (携帯から) (レス) id: 0bab093355 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年5月30日 17時
