29、揺れる、前髪 ページ29
やっと出番という目的を持てた私たちが、スコア探してきて、平居先生にもタクトを振る練習をさせて、メロディを振り分けて、って楽しくて。
「Aってこうやって人に仕事振り分けするの上手いよね」
大野くんが、ぼそり、と言った。
「……そうかな」
「うん。人をよく観察してる、得手不得手っての？ちゃんと見てる」
「……そうかなあ。嬉しい」
「うん。翔ちゃんは全体をまとめるのが上手」
「うん」
「相葉ちゃんは、ムードメーカーっていうか、みんながイライラしないように、考えてる」
「うん、そうだね」
「おれと、ニノは職人系でしょ、まちゅ潤はやっぱ魅せる方を重点的にがんばるよね」
一番最初にスコアを完成させて、フラッターの練習してる。
くっそ、とか呟いて、お色気の曲なのに、信じられない位大真面目。
シリアスな顔とストイックな姿勢と吹いてる曲のギャップ！
にやにやしてたら後ろから、二宮くんが私の頭をぐいーってやってきた。
「え！なに？」
「はい、次何やんの？翔ちゃん生徒会の方で忙しくてずっといないから翔ちゃん代理のAが仕切ってよ」
「翔ちゃん代理？」
「そう」
「部長いるのに！」
「あのひとはね、智子になる研究しなきゃなの。それはらんの担当」
「和は、何するの？」
「昼寝？」
和が、真向かいの席に座って私のスコアを覗き込んだ。
二人で俯いてる状態で、前髪だけが、触れ合ってる。
風に吹かれて、私たちの毛先が、ふわふわと揺れた。
前髪が触れ合う距離ということは。
顔を上げたらすぐ目の前に、あの鳶色の目があるということで。
「なんかしゃべんなさいよ」
和が、かすれた声で言った。
「……最近部活忙しくて、全然デートできてないんじゃないの？」
ああ、こんなこと聞きたくないのに。
「うん」
「さびしい？」
「別に」
「……そう」
スコアを書き写す手が震えないようにするのが精一杯。
「そういや、お前好きなヤツできた？」
「……」
ああ、なんて答えるのが正解なの。
ちょっと悩んで、私の脳裏によぎった、黒い感情。
悪魔の私が、囁いた。
「うん。出来た」
「……へえ」
「片想い」
「……ふふ」
「相談、乗ってくれるの？相談料は払えないけど」
「いいよ」
「……」
「相談、乗ってあげてもいいよ。お礼は、肩マッサージね」
ほらね、こういうと思ったんだ。
少しでも、そばに居たいの。
それだけなの。
ごめんなさい。
心の中で、あの子に謝った。
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みゅう(プロフ) - 解放ありがとうございます。涙。だいすきです。。 (2019年10月20日 22時) (
レス) id: 94596ebf5a (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - この学校に通いたいです。。こんな青春したい。。よしのさんのお話すごいツボです〜 (2016年1月6日 22時) (レス) id: 8994b070b7 (このIDを非表示/違反報告)
RAITO - こんにちは!!RAITOと申します。読ませていただきました。今までとは少し違うテイストの物語でわくわくします《*≧∀≦》青春の甘酸っぱい香り!! (2015年6月27日 11時) (レス) id: 485e47e579 (このIDを非表示/違反報告)
ちょりん(プロフ) - 高校までの6年やってたユーフォが出て浮かれてたら、最近始めたコンバスが！しかも担当が！勿論話も楽しくて(><)何があるのかドキドキしてます！ (2015年6月10日 1時) (携帯から) (レス) id: 83acbf6b6f (このIDを非表示/違反報告)
ぽにょか(プロフ) - 青春、ＳＦ、長編、どんと来〜い♪ 楽しいです。切なさもありつつ、和の避けたかった未来、それでよかったのか和と、分からないまま 和を叱咤激励、主人公ちゃんを応援しながら日々過ごしてます。 (2015年6月9日 23時) (携帯から) (レス) id: 0bab093355 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年5月30日 17時
