働きマンとYouTuber２

第73話 ページ26

「ねえ、葵さん。なんでマホト君は貴女を選ぶのかな」

『……』

喫煙所で煙草を吸っていると、彩乃さんがきた
でもそれはいつもの彩乃さんでは無かった
私を貶してきたあの元気が余りすぎていたあの彩乃さんでは無かった

『どうしたんですか、急に…』

「私がマホト君といる時だって、ずっとずっと貴女の事しか話して無かった、私が貴女を貶すと凄く怒ってきた、何でだろって」

『…私に、言われても困るなそれ…』

「私も葵さんみたいな人になりたいなあ」

『彩乃さんは、彩乃さんのいい所があるじゃないですか。私は彩乃さんみたいにそういう可愛い服とかメイクとか髪型とか出来ません、もし彩乃さんが私になってしまったら、彩乃さん自身きっと楽しくないと思う』

自分の好きなことで、モデルだってバンドだってスタッフだってやってる事であって
そこで偶々知り合った人が、その人だっただけ。

「私自身が、楽しくない、か…」

『今週のステージ、彩乃さんを楽しみしてる人が沢山くるから、その時雑誌では見られない彩乃さんを見せたらいいと思う』

「うん、そうだね。私葵さんと会ってマホト君とお付き合いしてるのに妬んでた。リスナーとして見ててずっと好きだったから余計。でも何となくわかったかな、葵さんを好きになる理由」

『好きになる理由、ですか』

「うん理由！私もマホト君に負けないぞ？」

『は？』


ちょっとまって、マホト君には負けない？には？

『あ、彩乃さん…私には、の間違いでは？』

「間違いないなんかじゃないよ、私、Aさんが好きになりました」

『は、はい？』

「だから、ステージの時見ててよね！？私貴女のために頑張るからね！？」

『ちょ、まって、彩乃さん！？』


彩乃さんは喫煙所を出て行ってしまった
このまま仲直りして、ステージ頑張ろうね！という流れだったではないか…
なんでこうなってしまったのか…

手に持っていた煙草は、途中から吸うのを忘れていた、灰だけが床に落ちてもう吸う部分すら無かった
また面倒な事になったぞ、と煙草を消して
私も喫煙所を出たのだった。




_

第74話→←挨拶

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す