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その当主、誇示 ページ10

「お嬢様、ファントムハイヴ伯爵がお見えです」



自室で本を読んでいるとメイドに告げられる、ヴィンセントの訪問


『……まさか本当に来るなんて』


「どちらにお通ししましょうか?」


『ちょうどアフタヌーンティーの時間だから、庭にティーセットを用意してくれる?』


「かしこまりました」




パタン

読みかけの本を閉じて、短く息を吐く

『わざわざ彼に頼むなんて、何考えてるのかしら、うちの両親は』




庭へと続くとガラス扉を抜けてガーデンテーブルに目をやると、こちらに背を向けて立つ彼の姿が映る



『……ヴィンセント、』


「A、綺麗な薔薇だ」


『あなたの温室にある薔薇の方が綺麗に見えるわ』


「あれはタナカの努力の賜物だろうね」


『本当に来るとは思わなかった』


「手紙を出しただろ?この時間に顔を見に行くって」



何が楽しいのかクスクスと笑っている彼を見ていると、少しの申し訳なさが出て来る



『顔を見に来たのは表向きの言い訳でしょ?


本当は両親に頼まれたのは分かってるのよ』


「きみが女王の謁見の間(クイーンズドローイングルーム)に出るように」



楽しそうに笑っていたヴィンセントが瞳を細める




『忙しいあなたをそんな事の為に出向かせるなんて……ごめんなさい』


「いや、それは構わない

むしろ、俺にとっても大事な話だ」


『そうかしら?』



椅子に座り、同じように腰掛けたヴィンセントと目を合わせる




「1週間前にきみの御両親から手紙をもらった時は驚いたよ、

まさか、


きみが本気で社交界デビューを嫌がってるとは思わなかった」




―19世紀のイギリス、上流階級の子女は女王陛下に謁見した後に社交界デビューするのが習わしであり、謁見後に初めて社交パーティーに出席する事を許される

1人前の淑女(デビュタント)として娘がパーティーに出るのは、より良い結婚相手を見つけるため




『わたしがデビュタントに出る必要はある?

あなた(婚約者)がいるのに?』



「なるほど、他の結婚相手を探す必要はないね」


『でしょう?』


「でも、そうなると、俺は妻を伴ってパーティーに出られないわけだ?」


『……』




デビュタントを経験していなければ社交期に夫に付き添う事もできない



まさか、それを引き合いに出されるとは思わなかったわ

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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時

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