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いつも冷静で何を考えているか分からない
彼の考えが読めた事など一度もない
それは、つまり互いの心が通じた事がないという事
そんな2人が夫婦になって幸せになれるとは到底思えない
「結婚するなら愛のために、
俺も同じ意見だよ、A、だから君を選んだ
頑固な君はどうしたら信じてくれるのかな」
視線を向けると、ヴィンセントの美しい微笑みが目に映る
騙されてはいけない、考えるのよ
この婚約を白紙に戻す方法を考えなくては――
2人の間に見えないチェス盤が存在するかのような圧迫感、
駒を動かす一手を誤まれば、そのたった一手で自分は全てを失うという緊張感、
―自分の手の中にある駒は何か?
ファントムハイヴ伯爵家、
ヴィンセント、
ウェストン校、
そう、ウェストン校
たしかウェストン校には伝統的な寮対抗のクリケットゲームがある、
ヴィンセントがいる紺碧の梟寮は開校以来、一度も優勝したことがない
わたしが彼に確実に勝てる賭けはこれしかない
『では、こうしましょう』
「?」
『6月4日、ウェストン校で行われるクリケット大会であなたの青寮(ブルーハウス)が優勝すれば、この婚約についてはあなたの意見に全て従う』
「…全て?」
『そう、
結婚するか、破棄するか、全てをあなたの決断に委ねるわ』
「面白い賭けだ、青寮(ブルーハウス)は優勝経験がない、痛い所を突くね。
青寮(ブルーハウス)が勝てば奇跡だね」
わたしにはクリケットの試合をどうする事もできない、
ヴィンセント次第で勝つ可能性もあるけれど、入学してから一度も優勝していないのだから、根本的に勝つのは無理な寮だと考えるべき
つまり、十中八九、この賭けにわたしは勝てる
『…諦める?』
クスッ
「まさか、何もせずに負けるなんて性分じゃないよ
そうだな、勝った時の条件を変えよう」
『えっ?』
「君が勝てば君の言う通りにしよう、Aが望めばこの婚約を白紙に戻すよ。
俺が勝ったら、
俺がきみを愛してるという事を信じてもらおう」
『……いいわ、
そんな簡単に奇跡は起こせない』
「1ヶ月後を楽しみにしてるよ、前夜祭で会おう」
『…1ヶ月後に』
パタン
Aが去った後の温室でヴィンセントは小さく溜め息をつく
「彼女だけは思い通りにいった試しがないな」
側に立つ執事が紅茶を給仕しながら若い当主に言う
「ファントムハイヴ家の当主たる者、奇跡ぐらい起こせずしてどうします?」
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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時