case:The six roses(6つの薔薇事件) ページ21
「またか」
朝食の席で新聞を読んでいたヴィンセントが呆れたような観念したような溜め息と共に言葉を吐き出した
『どうしたの?』
新聞を読む順番は夫が優先されるから、わたしはまだ今朝の内容を知らない
「物好きがいたものだよ、まったく」
もう読み終えたのか、夫がわたしの方に新聞を差し出してくる
『もう読んだの?』
「君より1時間早く起きていたからね」
『…その原因はあなただと思うけど』
「心外だな」
――またしても狙われた薔薇
昨日の夕方頃にドートランド子爵が所有するタウンハウス内に飾られていた石膏の薔薇が何者かによって壊されているのを使用人が発見した。
駆け付けた
なお、他に荒らされた部屋はなく、壊された美術品や盗まれた美術品はなかったとのこと
『物好きって石膏で出来た薔薇のこと?』
「今月に入って3件目だ」
『作者なのかも』
「犯人がかい?」
『自分の作品の出来に納得していないのかも。
だから作品を壊して回ってるのよ、だから他の美術品を壊してないでしょう?』
「探偵になれるよ、A」
『それ、楽しそうね』
「冗談だろう」
タナカ「ほっほっ、奥様が探偵になられれば旦那様の心配事が減りそうですね」
紅茶を注いでいたタナカさんが楽しそうにヴィンセントをからかう
新聞を閉じて『ほらタナカさんもこう言ってるわ』と得意げな顔を見せるとヴィンセントは意地悪そうな微笑みを浮かべて「そんな事すればどうなるか分かってるだろう」と目で伝えてくる
『もちろん冗談よ』
この話はこれで終わりにしようと注がれたばかりのティーカップに口をつける
タナカ「本日のお茶の葉はフォートナム&メイソンのイングリッシュブレックファーストでございます」
『美味しい』
タナカ「それはよろしゅうございました
こちらが今朝までに届いていたお手紙でございます」
銀のトレイに乗せられた手紙がヴィンセントに向けて差し出される
彼はその差出人を見て数枚をそのまま無造作にトレイに戻す
手元に残った方の手紙が気になるけど、さすがに『見せて』とは言えない
「そろそろ
『……はぁ』
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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時