悪の華【黒執事】 (ページ20)

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ファントムハイヴ

英国の裏社会

女王の番犬

話された秘密を必死に自分の頭の中で整理する

家系図(ファミリーツリー)を指で辿りながら、歴代の当主たちはこの秘密をどうやって配偶者に伝えたのだろうか

今のように相手を信じて秘密を打ち明けたか、

明かさぬかか生涯を添い遂げたのか

「…どう思う？」

『わたしが知ってるあなたは、いつも穏やかで、何かに悩んでる姿なんて見た事なかった

わたしが問題だと思ってる事の答えを先に知っていて、辿り着くのを待ってるのがあなた』

「秘密を明かして、Aが離れていくのが怖かった」

『…離れる？』

「君の夫は人殺しだ、この手で引き金を引いて実際に命を奪ってる」

『…じゃあ、屋敷を空けてるのは』

「言ったろう、仕事(・・)だって、ただし、表ではなく裏の仕事」

『わたしを置いて夜会に出たのはわたしを守るため？』

「裏の仕事の情報を集めに行くのに君を連れてはいけない」

『……他に秘密は？』

「これで全部」

『…本当に？』

「隠してたのはこれ1つだ、離れるのに十分な要素だと思うけど」

『…ヴィンセント』

「俺は卑怯だから、君を失うのが嫌で、必ず俺に恋をするように仕向けた

小さい頃から〈俺〉を植え付けた、用意周到にね

この事実を伝えるのも結婚後と決めていた、逃げられないように」

『わたしを愛してるから、でしょう？』

「ああ」

『離れていかないわ

あなたを愛してるから、ヴィンセント』

ゆっくりと首に手を回すと、ヴィンセントの腕が背中に回される

『1ついい？』

「この際だ、言いたい事は全て言ったら？」

『子ども嫌いなの？』

「ああ、そうだね」

『ふふっ』

悩む素振りもなく肯定されて、思わず笑ってしまう

『これ、まだ続くみたいだけど？』

タペストリーのわたし達の間から下に伸びる線をなぞる、
いずれは誰かの名前が刻まれるだろうか

『伯爵家なのだから、後継ぎは必要でしょう？』

「…まあね」

『ヴィンセント、自分の子どもは可愛いって聞くわよ？』

「俺の子どもが可愛いとは思えないな」

『わたしの血も入るから大丈夫』

「ふぅん、どうだろうね」

『実際に見てみないと分からないわね』

「他に聞きたいことはある？」

『ないと思う』

「じゃあ、

今から後継ぎを作ってみるのはどうかな？」

『えっ？今から？』

「こういうのは勢いで試した方がいい」

『そうかしら？』

秘密が仲を裂く事もあれば、愛を深める事もある