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「Aがそこまで社交嫌いだとは思わなかったよ」
『あんな所の何が楽しいのか理解できないの、
華やかに飾り立てていても、そこでする事はいつも一緒
他人の噂話、互いの腹の探り合いばかりよ』
「だが、そこで得られるものも多い」
『……そうね』
ファントムハイヴは代々続く名門貴族、パーティーに行くこともあれば、招くこともある
「2年前の賭けの勝ちはまだ有効だと思うけど」
ヴィンセントの瞳がNOと言わせないように鋭くなる
『…期限を決めておけば良かった』
2年前のわたし達の賭け
わたしが勝てば婚約の話はなし
彼が勝てば「愛している」という言葉を信じる
〈碧の奇跡)と言われるクリケット大会での優勝の後に、彼はわたしにプロポーズをした
YESの返事と共に彼の伴侶として生きる覚悟を決めたのだから、今回の我儘だって貫き通せるとは思っていたわけじゃない
もう少し、嫌な事を先送りにしたかっただけ
『謁見が終えた後、ちゃんと迎えに来てくれる?』
相手のいないデビュタントたちと連れ立って謁見の間を出るのは耐えられそうにない
「もちろん、ホールに行く前も出る時も喜んでエスコートするさ」
『なら、女王陛下に謁見するわ、せっかく招待状も頂いてることだし』
「その気になってくれて良かったよ、
俺まで説得に失敗したら、御両親に何を言われるか分からない」
『本当に謁見する気がないわけじゃなかったのよ、
別に今年でなくても良いかなって』
「もう18だろう?」
デビュタントの時期は16〜20歳まで
『まだ18だから、あと2年延ばせるかもと期待してたの』
わたしの言葉を聞いたヴィンセントは「その発想はなかった」と少し驚いたように呟いた
「俺はきみより2歳上なんだから、そこまで結婚を待つつもりはないよ」
彼はいつもそう、
優しい微笑みを携えながら、きっぱりと言い放って、逆らってはいけないと思わせる空気を出す
『あなたの心に他の女性が住むのは耐えられないから、この辺で折れるわ』
「Aのそういう賢いところが気に入ってるんだ」
ヴィンセントはわたしの白旗宣言に満足そうに笑ってティーカップに口つける
『今からデビュタント用の衣装をオーダーして間に合うかしら?』
「その心配は要らない、
ホプキンスにもうオーダーしてあるから」
『えっ? 聞いてないわ』
「そうだろうね、言ってない」
『……ヴィンセント』
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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時