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2years later
「ようこそ、Aお嬢様」
『お久しぶりです、タナカさん
フランシスは?』
「フランシスお嬢様は――」
ロンドン郊外に位置するファントムハイヴ家のマナーハウス、
Aがその邸を訪れるのは半年振りだった、いつもはフランシスの方が気を使って、Aの自宅であるスペンサー邸を訪れるからだ
Aとフランシスの2人で月に1回程度の頻度でお茶会を催しているのだが、
あいにく今日はフランシスが剣術の稽古のために邸を離れられず、時間の空いているAがファントムハイヴ邸を訪れる事になったのだ
ホールの扉一枚挟んだ向こうではフランシスが剣を交える音が聞こえてくる
「いま、フランシスお嬢様にA様がお着きになった事を」
『タナカさん、結構です
フランシスのことだから、きっとわたしが待っている事を知ればお稽古を早めに切り上げてしまうでしょう
終わるまで待ちます』
「しかし、」
『せっかく集中しているのに邪魔しては申し訳ないわ、
どこか別の場所で待たせて頂いても?』
「ご配慮恐れ入ります、
温室で育てていた薔薇が先日より開花し始めました、よろしければ温室にご案内させて頂きます」
『それは楽しみだわ、ぜひ温室に連れて行ってください』
温室に一歩足を踏み入れるとフワッと薔薇の香りが鼻腔をくすぐる
『見事な景色ですね』
温室には数種類の薔薇が育てられているのだろう、開花時期はそれぞれ違うのだろうが、今の時期はちょうど最も数の多い白薔薇が開花時期を迎えているようだった
「ありがとうございます、
どうぞお掛けください、今お茶をお持ち致します」
タナカが去った後に促された席から立ち上がり、ゆっくりとした足取りで咲き誇る薔薇に近づいていく
『上手に育てられたのね、本当にきれい』
「お褒めの言葉をありがとう」
『っ、ヴィンセント!
驚いた、まさか帰って来ているとは思わなくて、』
英国中の貴族の子息が通う、名門寄宿学校【ウェストン校】
ファントムハイヴ家当主のヴィンセントも例に漏れず、ウェストンに通っている、
いや、まだウェストン校にいると思っていた
「家の仕事でどうしても戻って来る必要があってね、今さっき着いたところなんだよ」
『……そう、大変ね』
「でも、帰って来て正解だったかな」
『……?』
「あっち(ウェストン)にいたんじゃAに会えなかったから」
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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時