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その当主、所望 ページ1

爵位を持つ家に生まれた女の子はみんな同じような事を言われて育てられる




〈何も知らない天使でありなさい〉





でも、女の子は物心がつく頃になると気付くのだ



自分たちはゲームの単なる駒のすぎないと







わたしにも決められた婚約者がいる、自分の意志ではなく、親同士が決めた結婚




周りと違ったのは、自分たちはお互いに婚約者だと知らずに幼少期を過ごした事




同じ年の男の子たちと比べても彼はずば抜けて冷静沈着だった、

何をしていても焦っている様子なんて見たことはなかったし、それはあの時も同じだった




【彼】は実の母親を亡くした時でさえ冷静だった、

声を上げて泣く事もなく、周囲の大人に助けを求めることもなかった




お葬式が終わって、お墓の前に立つ彼は、

わたしの知っている幼馴染ではなく、既にファントムハイヴ伯爵としての姿だった



涙を流したわけでもない、引き留められたわけでもない


それでも彼のそばを離れられなかった



それは――彼の心が涙を流しているように見えたからだと思う




『ヴィンセント、』


そう呼ぶと母の名が刻まれた墓を見ていた瞳がゆっくりとわたしを捉える


「……A」


『大丈夫、大丈夫


わたしは必ずあなたの側にいるから…わたしだけは最期まであなたを1人にしたりしない』


「っ、ありがとう」



わたしより2歳上の幼馴染は、何かを諦めたように力なく笑った




この時のわたしには想像もつかなかった、


母を亡くしたばかりの彼に既に【女王の番犬】としての重圧が圧し掛かっていたことすら




指先だけで繋がれた弱すぎる絆では彼を支えられないことも







少し離れたところで、フランシスが泣いているのがわかった


「…A」

『わたし、フランシスのところに行かなきゃっ』


ヴィンセントが引き留める間もなく、Aは涙を流すフランシスの元へ駆け寄っていく



「……坊ちゃん」


クスッ

「困った子だね、

ついさっき俺の側から離れないなんて言ったばかりなのに、もう俺の側を離れるんだから」


残された彼のそばに寄り添うのは1人の執事



ヴィンセントの視線の先には、彼の妹であるフランシスに寄り添うAの姿



「A……

ファントムハイヴの裏の顔を知っても、君は俺の元へ嫁いでくるかな?



まあ、きみが嫌だと言ったところで、手放す気はさらさら無いんだけれどね」

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設定タグ:黒執事 , ヴィンセント , 貴族
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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時

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