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和くんがいつもタバコを吸うライターで花火に火をつける
その花火から火を分けてもらって、わたしが持ってる花火がきれいな色を吹き出す
風が吹いていて、思っていたより火薬の匂いは鼻につかなかった
「花火すると夏っぽいな」
『夏と言えば？』
「クーラーの効いた部屋」
『ふふっ、そんな答え方する人いないよ』
「だって他になんかある？」
『あるよ、
かき氷とか、お祭りとか』
「冷えたビールとか」
『それは冬でも飲むでしょ？』
「ははっ、たしかに」
花火はあっという間に減っていって、残ったのは線香花火だけ
「はい、メインイベント」
『線香花火メインなの？』
「だって手持ち花火で1番有名じゃん」
『たしかに』
「火つけるよ」
和くんがそれぞれの線香花火にライターで火を灯す
「ゲームしよっか、A」
『ゲームって？』
「線香花火が長く続いた方が勝ち」
『自信あるよ、わたし』
だって和くんは飽きて途中で止めちゃいそうだもん
「驚かしたり、何言ってもOKな」
『分かった』
「……」
『……』
「Aちゃん、愛してるよ」
『…ッ…ありがと』
思いがけない言葉に涙が溢れてきて、手が小さく震えてしまう
和くんの言葉を聞いた瞬間にもう大丈夫だと思った
これがきっかけで二度と女優として表舞台に戻れなくなったとしても、きっとはわたしは後悔しない
『和くん…っ』
「んー？」
『…赤ちゃんっ……できたっ』
「え？…はっ？……マジ？」
驚き過ぎて和くんは線香花火をポトッと落とした
『ふふっ…わたしの勝ち』
言い終わると同時にわたしの線香花火も終わった
「Aっ！」
『え、きゃあっ』
和くんに抱き締められて体勢が崩れそうになるのをバルコニーの扉に支えてもらう
「こんなとこにいる場合じゃねえじゃん、
早く中に入らないと！」
『和くん、ちょっと待って』
「体冷えちゃいけないってよく聞くんだから、
あー、もう何でバルコニー出たのよ！」
それはあなたが花火するって聞かなかったからでしょ！と言いたいのをグッと堪えて、立ち上がった和くんの袖を引く
『夏だし、暑いぐらいだから大丈夫
とりあえず座って？』
「本当に大丈夫？」
『知ってるんだと思った』
「妊娠した事？ 情けねえけど全然気づいてなかった」
私が話しやすいように空気作ってくれたんだと思ってたけど、違ったんだね
「来年の今頃は3人？」
『そうだね』
「かき氷も、花火も」
『来年は3人だね』
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作者名：water lily
| 作成日時：2018年12月31日 15時
