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『うん、和くんが来るまで頑張っとくよ』
「ごめん、1人して」
『和くんが謝る事じゃないでしょ？ うちの親だって仕事優先して来れないんだから。
まだまだらしいから、気長に待っとくよ。
お仕事頑張ってね』
「うん、出来るだけすぐ行くから」
和くんとの電話を終えると、緊張の糸が切れたのか急に眠くなってきて、先生も寝れる時に寝てって言ってたもんねと自分に許可を出して、眠りについた
パタンッ
カチャ、ガチャッ、カサカサ
静かなはずの病室にビニール袋が擦れるような音がして目が覚めた
収録の空き時間で和くんが来たのかもしれない
『和くん？ いま何時？』
「あら、起こしちゃったわね、今は12時を少し回ったところよ」
普段聞き慣れない声が返ってきてパッと意識がクリアになる
『あ、お義母さん？』
「さっき和也から電話があって、陣痛が来たけど仕事で俺が行けないから代わりに行ってくれってね。
あの子にしては珍しく焦ってたわね、ふふ」
お義母さんは下の売店で買ってきたジュースを冷蔵庫に仕舞いながら、和くんから電話が来た事を教えてくれた
『すみません、忙しいのに』
「忙しくなんかないわよ、もう仕事も休んだって誰も困らないし、
おにぎり作ってきたんだけど食べられる？」
流石に2人産んだ経験者は落ち着いていて、テキパキと昼食の準備をしてくれる
「さっき看護師さんがお昼ご飯持って来てくれたから、見比べて食べれる物を食べなさいね」
テーブルにお昼ご飯を並べながら、お義母さんがベッドから立ち上がるように促す
『わたし、立って大丈夫なんですか？』
「何行ってるの？ トイレだって自分で行くんだから、立って座るぐらい大丈夫よ」
面白そうに笑いながら片手をわたしの背中に回して支えてくれる
その手がすごく温かくて不意に涙が込み上げて来た
「ふふ、1人で気負うことないのよ
みんなで赤ちゃんを迎えれば良いんだからね」
『っ、はい、ありがとうございます』
強かったり弱かったりと安定しない陣痛に翻弄されながら、ゆっくりとしか食べられないわたしにお義母さんは根気強く付き合ってくれて、
「今の病院食はこんなに美味しいのね」とか「あの子達を産んだ時は冷たい鯛が出て来たけど」と懐かしそうに話してくれた
夕方になってようやく先生が診察に来てくれたけど、
「奥手なのからね、子宮口の開きが思ってたよりゆっくりですね」
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作者名：water lily
| 作成日時：2018年12月31日 15時
