船上にて ページ5
私は林太郎さんに連れられて、横浜の海に浮かぶ船の上にいる。いつもは裏切り者とか情報を搾り取った捕虜とかも一緒にいる血なまぐさいものだけど、今日は違った。
いつものような生易しい取引などでは決してない。
船の上で佇むのは私と林太郎さんそして丸眼鏡をした青年、異能特務課のエージェントである坂口安吾だった。
「安吾君、久しぶりだねえ。今日はお招きありがとう。本職に戻ってから、調子はどうかな?」
にこやかに問いかける林太郎さんは性格が悪いとしか言い様がない。可哀想にと坂口安吾に哀れみの目を向けるも彼は気づいていないようだった。
「うちの若いもんを虐めんでいただきたいですなあ、マフィアの親分さん」
私たちの向かいに座った大男__内務省異能特務課の最高司令官である種田長官だ__は朗らかに言った。
彼に対し、一礼をする。
坂口安吾の発言を皮切りに互いの喉元に見えないナイフを突きつけあった対談が始まった。言葉の端々から伝わるピリピリとした殺気が船内を包んでいた。
種田長官の視線が私に刺さる。
「其方さんの飼い犬は随分としっかり躾されてはるようで」
「ええ、自慢の懐刀ですよ」
飼い犬発言にピクっと眉が動く。スルーしろ、スルー。こんな安っぽい挑発に乗るな。そうだ、龍之介のことを考えよう。龍之介の寝顔可愛かったな…。
私が心を落ち着かせている間も話は進んでいく。心の中ではニヤついていたが、顔には出ずに済んだらしい。よくやった、私の表情筋。
種田長官の背広から一葉の黒い封筒が出される。
それを見て林太郎さんは満足そうに笑った。まるで悪魔のような、綺麗な微笑みで。
463人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツッキー本体は眼鏡(プロフ) - 何度見ても面白い作品です。とても続きが気になります。 (2020年9月24日 11時) (レス) id: ada14fc3d5 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - 面白かったです。1年後を楽しみにしてます。 (2020年4月8日 21時) (レス) id: 40dba85962 (このIDを非表示/違反報告)
猫ずきん(プロフ) - この作品本当に好きです!更新ありがとうございます!!次も気長に待ちます!! (2020年3月16日 19時) (レス) id: 843a33d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
ツッキー本体は眼鏡(プロフ) - 続き待ってました!嬉しい! (2019年7月19日 0時) (レス) id: ada14fc3d5 (このIDを非表示/違反報告)
伊月(プロフ) - ものすごく面白いです!!続きが待ち遠しい…(`・ω・´) (2019年6月10日 20時) (レス) id: 97ec670de3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜幸 | 作成日時:2019年2月16日 20時