小さな狗 ページ2
龍之介はうずくまったまま私を見上げている。先程防御に異能を使ったせいで疲れているのかもしれないと思い、私は彼の前にしゃがんだ。
『龍之介、なんで殺して怒られたか分かる?』
「手掛かりとなる、貴重な捕虜を、殺したからです…」
『それだけじゃない。あの捕虜を生きたまま捕らえるのにどれだけの人材、道具、お金、技術を費やしたか理解してる?』
龍之介は血色の良くない顔を更に青くして首を振る。安心させるようにニコリと微笑むと、勘違いしたのか彼の肩がビクリと震えた。
『その異能がただ殺すだけのものじゃないことはさっきの太宰の行動でわかったはず。殺さずとも、手足をもぐことも龍之介になら出来たんじゃないかな?』
はっと気づいたような顔をして龍之介は私を見つめた。その表情はまるで迷子か捨てられた子犬のよう。可愛いと思ってるかって?勿論。
『まだまだ俺の部下にはなれそうもないかな』
頭を撫でながら言うと、太宰の大きな溜息が聞こえてきてちょっとイラッとした。お前はお呼びじゃねぇよ。
「堀さん…、僕はっ!」
何かを言いかけて俯く龍之介。嗚呼、可哀想に。
「本当に使えないね、これじゃ織田作が一人で全部解決してしまうよ」
『随分と信頼してるんだな、織田作之助のこと』
「当たり前じゃあないか!織田作は強いから、それこそ芥川君が到底適わないくらいにはね」
その言葉を聞いて、龍之介が絶望したような顔をする。そりゃあそうだ。一介の下級構成員にも己が劣ると侮蔑されたのだから。
何も言わずに龍之介は石畳に手をつけたまま、ギリッと歯を食いしばって思い切り太宰を睨みつけている。その憎悪は太宰に向けられているものか、龍之介自身に向けられているのかそれはわからなかったけれど。
太宰に彼を預けた私のことはどう思っているのだろうかと一抹の不安を抱えたまま私はうっすらと微笑むことしかできなかった。
463人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツッキー本体は眼鏡(プロフ) - 何度見ても面白い作品です。とても続きが気になります。 (2020年9月24日 11時) (レス) id: ada14fc3d5 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - 面白かったです。1年後を楽しみにしてます。 (2020年4月8日 21時) (レス) id: 40dba85962 (このIDを非表示/違反報告)
猫ずきん(プロフ) - この作品本当に好きです!更新ありがとうございます!!次も気長に待ちます!! (2020年3月16日 19時) (レス) id: 843a33d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
ツッキー本体は眼鏡(プロフ) - 続き待ってました!嬉しい! (2019年7月19日 0時) (レス) id: ada14fc3d5 (このIDを非表示/違反報告)
伊月(プロフ) - ものすごく面白いです!!続きが待ち遠しい…(`・ω・´) (2019年6月10日 20時) (レス) id: 97ec670de3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜幸 | 作成日時:2019年2月16日 20時