【募集企画】とある最強の独立大隊。＜本編＞ (ページ32)

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動かない拷問官ページ32

上の方から微かに乱闘の音が聞こえる。
どうやら戦争が始まったらしい。
幸月は眉を顰め、んな頻繁に戦争が起こってたまるかとぼやく。これでは私も参加させられる流れではないか。

あんま怪我したくないんだけどなぁ、と呟く彼女は痛覚無効と回復の能力を持つ。なら大丈夫ではないか、と思うが、流れた血は戻らないし、見た感じも痛々しくて嫌だ。
その上ちょっとしたトラウマを持っているのだ。いたぶるのは好きだが、いたぶられるのは好きではない、というか私居なくてもなんとかなるだろ。我儘な持論だが、『私居なくてもなんとかなるだろ』に関しては合っている。なんせ、彼女が属している大隊の隊員は揃って最強である。確かに痛覚無効と回復持ちなだけの彼女は、肉壁扱いされるくらいだろう。実際そんな事は無いだろうが。…無いよね？

「あーやだやだ。」

うんざりだ、と頭を振り、椅子の背もたれに顔を埋める。もふもふだ。
柔らかい毛でできた背もたれをもふりながら、あー、と低い唸り声を漏らす。
うーうー唸りながら手をふらふらと伸ばし、椅子の隣に置いてある箱の中身を探る。
箱には幸月の愛用武器が詰め込まれている。猛毒が塗られたイバラムチ、ハンドガン、薙刀などなど。ちなみに先程手に持っていた大振りのナイフも愛用武器の一つだ。
求めているものを見つけたらしい幸月は腕を元に戻した。
その手に握られているのは、握り心地の良い黒いイバラムチ。例の猛毒が塗られたやつだ。
塗られている猛毒は象をも短時間で殺すもの。楽に倒せる上に敵の苦しむ姿が見られるので、その鞭は彼女のお気に入りだ。
幸月は死んだ魚の目で鞭をしならせる。地下室には鞭が風を切る音が響いた。ドMが喜びそう。

「そろそろかな…？」

またあーーーと唸り、次は肘掛に顔を埋めた。
そろそろ誰かが幸月が居ないことに気づき、上でやっているドンパチに引き摺り込もうとする奴が来るだろう。
幸月はあーやだ。と呟き、鞭のグリップを握り締めた。