ここにいたこと【４８】

３９ ページ41

それから数日後のある日、

事情があって少しリハーサルに遅れていったとき


「なぁ、答えろよ！！」

「突然いなくなって、今度はここにいるってどういうこと？」


大きな声に驚いて駆け付けてみると

ステージ袖でAが数人のメンバーに取り囲まれていた。

手こそ出されてはないものの、メンバーたちは怒り口調で

ひたすらAを問いただそうとしている感じ。

そんな中でも、元仲間に一方的に責められて辛いはずなのに

Aは笑顔のまま、だんまりを続けていた


優「どうしたの〜」


私は何も事情を知らないふりをして

さりげなくその輪に入り込んだ


才加「こいつさ、何聞いても何も言わないんだよ」


イライラしてる才加


佐江「佐江たちは理由を知りたいの。なんで突然辞めちゃったのか」


ちょっと悲しそうな顔をして訊く佐江ちゃん


A「私には無理だって思ったの。ただ、それだけ」


Aは笑顔を崩すことなくきっぱりとそう言った


才加「それだけって…じゃあなんであのタイミング？

　 もっと早く辞めることはできたでしょ？」

A「ごめんね…」

佐江「もぉいいよ。いこ」



メンバーは詳しいことを聞くことなくAに背を向けた。


才加「ほら、優子も。レッスン始まる」

優「う、うん…」


メンバーのみんなの前では私もAに背を向けた

切ない笑顔を浮かべたAを残したまま…

４０→←３８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す