あなたをさらいに夜がくる ２【文スト】【深夜廻】

夜廻６８.必要性 ページ40

『私は、今日はバイトがお休みなので‥‥

気分転換に散歩でも、と思って』



「ほう‥‥？

その割りには、酷く沈んでおったようじゃが」




『うぐっ』



痛い所を突かれて、私はつまってしまう



ほんとにそうだ。気分転換に来たというのに、私は何をやっているのだ




『‥‥‥姐さん‥‥』


「なんじゃ」


『もし友達になりたいと思ってる人が、世界の違う人だったらどうすればいいと思いますか』




「諦めるべきじゃろう」




バッサリ




即答で一刀両断されてしまった



即答って。即答って！




ダメージを負った私は、ぐったりと俯く







「‥‥まぁ、それはわっちの話じゃな」



『‥‥え？』



そなたの持つ光は別じゃ






そう呟く姐さんに、なんの事ですか？

と問うけど何でもないとはぐらかされてしまう







「まぁ、とりあえず



なんの歩み寄りもせず、一人で弱音を吐いてい
るうちは、絶対に無理じゃろうな」







『！！』







言葉が刃のように鋭く刺さる




私は唇を噛み締めた







『‥‥どんなに歩み寄っても


相手の事を知っても


あの人達の居る世界は、私がこの世で一番憎い
世界なんです


全てを受け入れるなんて出来ない





どんなに頑張っても‥‥』









「受け入れる必要が何処にあろう？」







静かな声が響いた







『え‥‥』





「相手の全てを受け入れるなど、主は神にでも
なったつもりか？


その様な芸当は絶対に出来ぬ



なぜなら、わっちらは人間じゃからな」







目を見開いた私を、姐さんは哀しげな瞳で見る





「まず話せ


そして考えるのじゃ



受け入れる事が出来ぬのは、愚かな事では無い



知ろうとせぬのが、愚者なのじゃ





‥‥それが、わっちには出来なかったのであろ
うな」




浮かべたその笑みが、哀しい程に美しかった









私はその場に縫い留められたかのように動く事が出来ない









「‥‥おや、そろそろ時間じゃ


わっちは戻らなければいけぬなぁ



A」






また、会おうぞ









呆然としている私の目の前から、ほっそりとした後ろ姿は、たちまち姿を消した









＿＿＿彼等と、話し合うなんて







そんなチャンス、果たしてあるものか





私はこの後も、その事で頭を悩ませる事になる





しかし









＿＿＿そのチャンスは後日、最悪の報せと共に
飛び込んで来ることとなるのだ

夜廻６９.我が儘→←夜廻６７.それが彼等の任務だから

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す