あなたをさらいに夜がくる ２【文スト】【深夜廻】

夜廻６７.それが彼等の任務だから ページ39

ふと、目にオレンジ色の花が入った


派手な見た目だが、凛とした強かさがある花



『‥‥‥中原さんみたい』


ぼそりと呟いた





『‥‥じゃあ、こっちの紫は龍かな




この暗い赤は森鴎外さんっぽいかも』




私の差していた指は、ある花でぴたりと止まる



『‥‥‥』



真っ赤で可愛らしい、可憐な花



『‥‥これは‥‥』







＿＿＿私の遊び相手になって！




『‥‥つっ‥‥』



口元を覆う




あの人達が、マフィアじゃなきゃ良かったのに


そしたらなんの抵抗もなく、エリスとも一緒に居られたし、龍とも話せた


中原さんのことだって、お兄ちゃんみたいに慕えたはず


なんて酷いのだろう


彼等と友達でいたい


会って話したりしたい



でも、私と彼等じゃ住む世界が違う


プライベートで会うなんてこと、出来ない


そんな事したら、たちまち仲間になれと迫られてしまうだろう


それが命令なのだから


仲良くなってしまった後に、こんな隔てはあんまりだ


気分転換に来たはずなのに、参ってしまう



否、彼等からしたら、私はただポートマフィアの戦力に利用するだけの存在なのかも知れない






‥‥‥私、駄目だ



全ての事に感傷的になっている


瞼がじんと熱くなった


酷く惨めな想いで、膝を抱える









「‥‥この様なところで、何をしているの
かえ？」









聞こえた声に、ばっと顔を上げた




私の隣に、着物姿の美しい女性が、傘をさしながら私を見下ろしている



『す、すみません！お邪魔でしたか？』



「いや？この様な美麗な花々を目に写さず、
珍妙な行動をしているおなごがいたものでな

少し気になってしまった」



は、恥ずかしい‥‥！




私は思わず顔を覆う



「ふふ、面白いおなごよのう


娘。なんという名じゃ？」



『あっ、えっと、水無月 Aといいます』


「ほう‥‥いい名じゃ」


『あの‥‥貴方のお名前は？』


私の質問に、女性は持っていた傘を傾けると、見目麗しい笑みを浮かべた



「わっちは紅葉

姐さん、とでも呼んでくれ、A」




＿＿＿＿
＿＿



『‥‥じゃあ、姐さんは、出張から帰って来た
ばかりなんですね』



「一段落したのでな

最近成長してきた部下が一人いるんじゃよ


任せても問題あるまいと思ってな」




時間を忘れて、その人と喋っていた



紅葉さ‥‥姐さんは、お仕事から帰って来たばかりで、たまに来ていたここに久し振りに花を見に来たらしい

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