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夜廻65.bitter or sweet ページ37

「うん。美味しい。さすがだね」


『ありがとう、ございます』



昼食を食べに来る客足が落ち着く昼下がり


日だまりの落とされた窓辺の席で、Aは
太宰の接客をしていた



『珍しいですね‥‥太宰さんが甘味を注文する
なんて』



「乱歩さんがいつも食べているのを見て、少し
試してみたくなったのだよ

‥‥ふむ、予想より甘くないのだね

私の好きな味だ」


『あ、それ江戸川さんのより控えめに作ってあ
るんです

いつもブラックのコーヒーばかり呑んでいた
貴方が、江戸川さんが食べているのと同じ物を
食べたら、胸焼けを起こしてしまうと思って』



「‥‥君、本当に良く出来た店員だね」



ポツリと呟いた彼は、またホォークでケーキを口に運ぶ


それを見て、私の頭に甦る物があった



『‥‥あの、太宰さん』


「なんだい?」



『太宰さんって、ポートマフィアの
元最年少幹部だったんですよね』



ホォークを持つ手が止まった



「‥‥拐われた時に聞いたの?」


こくりと頷く


太宰さんはホォークを皿に置くと、口元に着いていたクリームを真っ赤な舌でペロリと拭った



「否定はしないよ。確かに私は昔彼処に居た」



やっぱり、本当なんだ



『お聞きしたい事があります』


「‥‥言ってご覧」





『エリスという少女をしっていますか』




彼はその鳶色の瞳を細めた



「エリス嬢‥‥また懐かしい名前だね


勿論しっているよ


森さんのお気に入りの幼女であると同時に、
彼自身の異能力さ」



『‥‥異能力!?』


「そうだとも」




軽い衝撃を受けた




私の目の前で、美味しそうにタルトを頬張っていた姿が異能力とは到底思えない



「それがどうかしたのかい?」


『‥‥いえ、それだけです』



そう答えると、彼はふうん、と呟き最後の一切れを口に入れた




「後で鏡花ちゃんがここに来ると言っていたよ


‥‥ところでAちゃん」




カチャリとホォークが置かれる



「明日の天気を知っているかい」

『? 一日中晴天だったと思います』


そう、と太宰さんは微笑む




「近くにいい公園があるのだよ

散歩に行ってみたらどうだい

新しいアイディアも湧くかも知れないしね?」





『‥‥散歩ですか』


晴れの日に一日中室内に籠るというのも、良くないものだよ


彼はそう呟き立ち上がる



「ご馳走さま

‥‥美味しかったよ」


太宰さんは私の頭をくしゃりと撫でると、軽やかな足取りで店を後にした

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りんず(プロフ) - ユイさん» ユイ様、コメントありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです! (2018年4月8日 10時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - おもしろかったです (2018年4月8日 1時) (レス) id: e31a251f71 (このIDを非表示/違反報告)
りんず(プロフ) - 「名もなき贖罪の銃士の少女」さん» ありがとうございます!(^-^) (2018年4月4日 20時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)
「名もなき贖罪の銃士の少女」(プロフ) - 良かったです!これからも頑張って下さい! (2018年4月4日 20時) (レス) id: bb589a0fac (このIDを非表示/違反報告)
りんず(プロフ) - 「名もなき贖罪の銃士の少女」さん» 「名も無き贖罪の銃士の少女」様、イメ画ありがとうございます!とっても嬉しいメッセージまで添えて頂いて、にやけそうになりましたが、自分で足を踏んづけてこらえました((近々載させて頂きます!本当にありがとうございました! (2018年4月4日 20時) (レス) id: f93fc47876 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りんず | 作成日時:2018年3月16日 19時

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