元カレが、何故か毎晩家に来る【夏油傑】

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大前提として、私は恵まれている

顔の良い両親の遺伝子バッチリ受け継いだおかげで顔面偏差値は上の中、身長も167センチとそこそこあり、もともと太りにくいのもあってスタイルも普通にいい方…だと思う。いやいい方だ、スタイルもバッチリだ。働いている会社もホワイト企業で、まるで悩みなんて生まれないような幸せ一色の人生だ。

なんて思いながら、気合いの水を一杯ゴクリと飲み込む







時刻は19時59分

"ピンポーンッ"

カチリと時計の針が進んだと同時になるインターホン









「ﾁｯ、これさえなければ本当に幸せ一色なのによ…！」









出来るだけの小声でそう言って、抜き足差し足忍び足で玄関に向かう

実際これは無駄な足掻きだ。だってこの時間に私が家にいるのをアイツは分かってる、居留守はもう5,6回試したけど少し大きめに息を吸った呼吸音で速攻バレた。ぶっちゃけキモい、なんで呼吸音で分かるんだよ。前世忍者か暗殺者でもやってたのか？

馬鹿げたことを吐き散らかしながらドアスコープを除けば見慣れた黒髪ロングの野郎が1人









「………どちら様ですか」

「あ、A。ふふ、来ちゃった♡」

「いや来るんじゃねぇよ帰れ」

「えぇ酷いなぁ…ね、顔見たい」

「私は見たくないけど見せられて不快だよ、マジ帰れ」









私が見てると気づきドアスコープ前で物凄いきゅるん顔をする扉向こうの男

やめろ、顔がいいせいで普通に様になってんの腹立つんだよ









「ねぇ、A」

「……なんだよ、帰れ」

「お隣さん？か分からないけど人に見られてる」

「わぁ！！いらっしゃい！！ごめん部屋片付けたー！！あははー！！」









慌てて玄関の扉を開けて隣を見ればそこは無人










「ぁ"ｯ…〜〜っざけんなよ！！！？」









ガシッと掴まれた扉に私の顔は絶望一色
薄く細めた目は完全に私を馬鹿にしている

幸せ一色になれるはずの私が抱える
唯一の悩みの種であるこの男は








「相変わらずお馬鹿さんだね♡」










クズな私の元カレである









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