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第百四十二話【白鯨】 ページ45

「単身で私に歯向かうとはいい度胸だ。しかし、いいのか?小公女(リトルプリンセス)を守らなくて?」


私はその声にハッとした。同時にフィッツジェラルドは右手を上げようとした。


何をしようとしているのか考えるよりも先に結論が出ていた。それは今、銃の照準が私ではなく、鏡花にある事。例え【黒】によってフィッツジェラルドを気絶させても、その間にゴム弾が鏡花へ当たる。所謂、相討ちだ。仲間を犠牲にして勝つなんて、そんなもの認めて言い訳がない。今走ればきっと間に合う筈だ......!


私はフィッツジェラルドから拳を引き剥がすと必死に足を動かした。転びそうになる姿勢を何とか立て直し、走り続けた。


「矢張り、君はそれを選ぶか......」


背後でフィッツジェラルドがそう呟くように聞こえた。しかし、私は走る事だけを考え、反論する言葉を押し込めた。


(あと何秒だ。何秒しかない......いや、もう考えるな。とにかく走れ......!)


私はあと一歩という距離で、鏡花に向かって手を伸ばした。


(間に合え......間に合え、間に合えー!)


パァン......!


一発の銃声が辺りに響いた────








────次に気づいた時、私の見えている世界はゆっくりだった。頭に衝撃が入った所為で目の前がぼやけては真っ暗になったりと繰り返した。


「Aさん如何して......」


不意に鏡花の声が聞こえた。その声に反応するように鏡花を見ると、その目には涙が溜まっていた。


「わ、私が......守るって......決めたから......」


私の口から弱々しい声が出た。


「安い友情だ。目に見えない価値に何処まで執着する?金こそがこの世に最も絶大な価値を成すというのに......」


フィッツジェラルドは地面に横たわる敦の首を掴んだ。


「さぁ、メルヴィル君。新拠点のお披露目と行こう」


「......承知した」


その短いやり取りの後、海が震えた。そしてその直後、大きな飛沫上げながら何かが現れた。


「久しいな......相棒」


『組合』職人(フェロークラフト)

ハーマン・メルヴィル

────能力名『白鯨(モビー・ディック)


海の中から正に白い巨大な要塞が出現した。

第百四十三話【忘れていた言葉】→←第百四十一話【作戦の異端者】



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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

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