第百十話【心配事と安心事】 ページ14
「失礼します。太宰さん居ますか?」
私が医務室の前で声を掛けるが、中から返答はなかった。
そこで不思議に思いながらも、恐る恐る医務室に入ってみたが誰も居なかった。可笑しいなと私が首を傾げていると、二つ寝台がある内の一つで誰かが寝ているのに気がついた。矢張り、寝ているのだろうかともう少し近づいてみると......
「ばぁ!」
ビクッ......!
急に背後から驚かされた事により私の体は飛び上がった。
私は直ぐに後ろへ振り向いた。其処には悪戯っ子の様に笑う太宰とその後ろであわあわと慌てる敦がいた。
「だ、太宰さん......驚かさないでくださいよ。心臓が飛び出るかと思いましたよ」
「僕もAさんが部屋に入る前に、いきなり太宰さんが「扉の後ろに隠れて」って言ったから......」
「だって、不安そうな声で部屋に入って来たんだから、脅かしがいあると思ってね」
「それは......与謝野先生に太宰さんの居場所をお聞きしたら、医務室に居ると聞いて、もしかしたら怪我をされているのかと心配になって......ん〜〜〜!兎に角、元気そうなら良かったです!」
私は言葉を言い切る前に、頬をぷっくりと膨らませた。
私の中で心配しなくても良かったという気持ちと無事で良かったという気持ちが混ざり合っていた。しかし、本当に無事で良かったという気持ちの方が何よりも勝っていた。
「ごめんごめん。もうしないよ。まぁ、Aちゃんもそのくらい元気で良かった」
私はその言葉に目をパチクリとさせた。
そうだ。私はつい数時間前まで瀕死の状態であったのに、与謝野のおかげとはいえ、もし救援が遅ければ生の線を超えていた。逆に救援に来てくれた者達に感謝しなければいけないのだろう。
「そうだ。私に用があったのだろう。如何かしたのかい?」
太宰が私に訊いた。
そうだった。何の用も無しに太宰の元に来たのではなかった。驚かされた事に気を取られて、すっかり目的を忘れていた。私は手に持っていた紙を太宰に差し出した。
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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時