余。4 ページ20
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ともやside
夏のことだったか。
__________…
『ギターも、持ってるんだ』
付き合ってから初めてAを俺の家に呼んだ日。
キラキラした目で、俺のギターとベースを床に所謂女の子座りをして眺めていた。
ともや「いいよ、触っても」
『いや、悪いよ』
ともや「いいって。どれ?」
『え…うーん、これ』
少し悩んでピッ、と指差したのは、俺が初めて買ったギターだった。
正直安物で、今は作曲も別のギターでしてるから、あんまり使ってないやつ。
ていうか、彼氏はベースやってんだから、ベースにしろよ
とも思ったけど、ギターがいいならしょうがない。
ともや「はい」
ネックをもって差し出すと、恐る恐るといった感じで、そのギターを受け取った。
ピックも手渡すと
『どーやって弾くの??』
ともや「え?あー、」
そっか、弾いたことないのか。
音楽聞くけど、楽器やったことないっていってたなぁ、なんてぼんやり思い出した。
Aの左手を掴んで、Cの形に押さえられるように指を弦に乗せていく。
それだけのことなのに、なんだか、なんだろ、
纏う部屋の空気とか、
二人の距離とか、
なんかよくわかんないけど
Cコードを鳴らして、心底うれしいって顔で笑うAとか
それだけで
ああ、これが幸せかって思えた。
そう思ったら、帰り際に玄関で靴を履き終えたAに、ケースに入れたテレキャスターをグンと押しつけながら
ともや「あげる」
って言ってた。
この幸せが何か形になってくれたら
なんて柄にもなく思った。
__________…
その、ギターが今ここに、千葉の手に。
Aは言ったのだろうか、
それ、ともやのだよ、って
言うわけないよなぁ。ていうかしらねぇよって話だよな…
でも、もやもやして、二人でどんな会話したの?とか、さっきまで一緒にいたの?とか聞きそうになって。
千葉の大喜利の答えはいつも以上に笑えなくて
ごめん本当に、
って誰かに謝りたくなるほどに
好きなんだ、Aのこと、今もずっと。
嬉しそうにギターを弾く、あの夏の日に戻ってしまったようだった。
撮影終わり、千葉があーそういやーと切り出した
千葉「Aちゃんにチケット渡しといたから来るかも」
小柳「まじ?ちょうどいいじゃん、ちゃんとお礼言っとけよ」
千葉「うん、言っとくー」
その話を聞いて、ニコッと笑ったにっちと目が合う。
それ、どっちの表情??
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なぁ(プロフ) - 沙季さん» 沙季さんありがとうございます!ちょっとずつしか更新出来てないのですが、頑張ります!! (2019年7月11日 16時) (レス) id: 07945c6d2e (このIDを非表示/違反報告)
沙季(プロフ) - いつも更新楽しみにしています!頑張って下さい! (2019年7月11日 2時) (レス) id: 7998ec173a (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - わたり。さん» わたり。さんありがとうございます!楽しみにしてくださってるなんて…!!頑張ります!コメント頂けて嬉しいです! (2019年7月6日 19時) (レス) id: 07945c6d2e (このIDを非表示/違反報告)
わたり。(プロフ) - 突然のコメント失礼します(笑) この作品とても楽しみにしてます!頑張ってください!! (2019年7月6日 19時) (レス) id: a563c15956 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - なかむらさん» なかむらさんありがとうございます!長編の予感しかしませんが、すごく書きたい作品なので更新頑張ります! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 07945c6d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なぁ | 作成日時:2019年5月15日 2時