六頁目 ページ6
「…う、」
鞄に手が触れるまで後少しといったところでタイミングよく、いや悪く彼が起きてしまった。
慌てて私は手を引っ込める。
「あぁ、起こしちゃってすいません。でもこんな所で寝てると風邪ひきますよ！」
口からはスラスラと偽善の言葉が出てくる自分にある意味感心してしまう。
本音を言うと私が鞄を覗くまで寝てて欲しかったのだが。
彼は顔をあげて眠たげな目で私の事をぼんやり見つめる。暫くすると状況を理解したのか突如ギョッとした顔を作る。すぐさま顔を逸らして胸ポケットからマスクを取り出すと即座に口を覆った。
「……すいません……」
寝起きだからか彼の声は酷く掠れていた。
「いえ、こちらこそ。貴方もサバイバーの方ですよね？私は農家のAって言います」
彼も少し間を置いて名を名乗る。
「僕は…僕はイソップ・カール。納棺師」
納棺師。聞き慣れない職業だ。 聞いたことが無いわけではないが実際にこうやってその役職の人間を見たのは初めてだ。ということはその黒い鞄の中は死人用のメイク道具が入っているのだろう。
「うん、よろしくお願いします」
「はい」
自己紹介をしたはいいものの会話は続かない。彼は話すのが苦手そうだしあまり無理に会話に付き合わせたくはない。そう思って気まずさを紛らわすように目の前の水溜めを見つめていた。
「…あの、貴方は、何故このゲームに参加したんですか？」
意外なことに彼の方から話を振られた。
彼は目線を合わせて話すのが苦手なのか頻りに私と右上あたりを交互に見続けている。
振り子時計みたいだななんて思って口に出そうとしたが流石に失礼なのでやめた。
「私？私はね、まんまお金の為だよ。生活が苦しくてこんなのに縋るしかなかったって感じ」
「……そうなんですか」
意外と反応が薄い。やはりイソップくんもお金が目当てできたのかもしれない。みんなやっぱりそんなものなのかと思っていたが。
「僕はとある方に手紙を届けにここに来たんです」
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野菜 - 感想ありがとうございます！こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください！ (2019年6月27日 16時) (
レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです！切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：野菜 | 作成日時：2019年6月22日 13時
