十九頁目 ページ21
気が付けば私は木製の椅子に座っている。ボロボロの机の上には淵が欠けた皿の上にパンがある。
その皿の横にはこの場に似つかわしくない少し豪勢なナイフが1つ。
頭上に吊り下げられた小さな豆電球だけが私と向かいの席に座った父さんを照らしていた。
これは夢だ。これは私が幼い頃に蝶を殺した時の夢。今までに何度も何度も見ているからすぐに分かった。
味気のないボソボソとしたパンを胃に入れていれば、出入り口の方から蝶が迷い込んでくる。
それを見た父さんは驚いて席を立つ。
父さんは蝶が嫌いだった。だから父さんが嫌いな蝶は私も嫌いだった。
流石に席を立つような程ではなかったけれども。
父さんは蝶がこちらに近づくたびに大袈裟に騒ぐし終いには謝罪をし始める。
しかし蝶はそんな様子を気にも留めず、父さんの方へと詰め寄った。
余りにも父さんが蝶を怖がるし、うるさいものだから私は席を立ち近くのナイフで思い切り蝶の背を突き刺した。
ナイフはいとも簡単に蝶の体を穿つ。蝶は顔をこちらに向けて必死に手足をバタつかせたが、やがて動かなくなった。
ナイフを引き抜こうとすれば接続部が緩かったのか刃と柄の部分が分離して尻餅をついた。
父さんの顔は青ざめていた。
もう蝶はいなくなったんだからそんな怖がらなくてもいいのに。
その後は粉々にした蝶の死体を畑に埋めた。
川に捨てようとしたんだけど父さんからもう夜だから近場でいいと言われた。
それと、父さんはナイフの刃を私に「御守りとして持っておけ」とも言った。
死体を埋めた年はやけに作物が良く育ったのを覚えている。
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野菜 - 感想ありがとうございます！こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください！ (2019年6月27日 16時) (
レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです！切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：野菜 | 作成日時：2019年6月22日 13時
