十八頁目 ページ19
もう彼のせいで私の情緒はぐちゃぐちゃだ、いったい彼は私をどうしたいんだ。
その間に彼は布を見つけたのかこちらに走り寄ってくる。
……私の間違いでなければ手に見える白い布は遺体の顔にかける打ち覆いに見えるが。
「肩をこちらに出してください」
言われるがままに腕を突き出して左肩の部分を彼に見せる。
彼は器用に傷口周りの血を拭き取り、何かの粉末が入った容器を取り出す。
「何、それ……」
今のところ彼が出す物全てが不審に見えて仕方がない。
「……これですか？止血剤です」
そんなものまで持ち歩いているのか。まるで医師のようだ。
彼は粉末を直接傷口に掛けはじめる。消毒液はしなくていいのだろうか、と不安になっているとそれに気付いたのか彼は「消毒液は今回の場合なら、要らないですよ。傷を修復しようとする体内の細胞が死滅するので……」と解説する。
そして傷口を閉じるように布でキツめに固定する。
医者、までとは行かないが彼の治療は適切で流石としか言い様がない。
事前のゴタゴタが無ければ死ぬほど感謝をしただろう。
「……はい、終わりましたよ」
「イソップくんはさ……私を生かしたいの、殺したいの……」
その質問を聞いた彼は首を傾げて「なんでそんな事聞くんですか？」とでも言いたそうな顔でこちらを見る。そして次に彼が放った言葉を聞いて、聞かなければ良かったと後悔する事となる。
「僕、死体修復はあまり得意分野でないので……」
その言葉を聞いて心底幻滅したのをハッキリと覚えている。
昨日の考えを撤回しよう。
彼、イソップ・カールは不思議な人なんかではなく、生粋のサイコパスである、と。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
野菜 - 感想ありがとうございます！こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください！ (2019年6月27日 16時) (
レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです！切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：野菜 | 作成日時：2019年6月22日 13時
