十四頁目 ページ15
食堂の扉を開けるとイソップくんが背を向けて屈みこんでいた。
「ここで何があったんですか？」と話しかければ面白いぐらいビクッと肩を跳ねさせる。
「……Aさんですか。驚かせないでください……」
いや別に驚かせる気は無かったが……。
彼は箒と塵取りを持っていてあたりに散らばったガラスの破片を集めているようだ。
イソップくんはそのまま話を続ける。
「僕は……正しい事、言ったんですけど……。彼女の、その……逆鱗に触れたみたいで……」
その話を聞いてあぁ、と納得した。彼と出会った際ゲームに参加した理由を聞いていた。
話下手そうな彼の事だし、恐らくそれで地雷でも踏み抜いてしまったんだろう。
「それは……まぁ、ご愁傷様……。私も片付けるの手伝うよ」
どちらに非があるのかはその時その場に居なかった私が決めつけてはいけないので曖昧な言葉しかかけられない。
塵取りと箒はイソップくんが使っているし、私は布巾を持ってきて机に広がり床にまで滴り落ちている赤っぽい液体を拭く。
吹いているとアルコールの匂いが鼻腔をつく。
「もしかしてこれ、ワイン？」
「……多分そうです。彼女が昼食後にワインを見つけたと、言っていたので」
そう言って振り向いた彼の顔を見て思わず笑いがこみ上げる。
多分笑いを堪えていたので変な顔をしていたのだろう、彼に怪訝そうな目で見られる。
「何、ですか…急に……」
「いや、ふふふ。イソップくん、マスクが、ね……！」
彼がつけているマスクには鼻の頭辺りから一直線に赤いワインの跡がついていた。位置が位置なだけに鼻血のようで笑いが抑えられない。
まだマスクの跡に気づいてない彼は先程よりも更に怪訝な目でこちらを見る。
いい加減教えてあげなければ、と思いポケットから手鏡を取り出して彼の顔の前に持っていく。
彼はそれを覗き込むとまた昨日のようにギョッとした顔をする。
少し硬直した後「……忘れてください」と言いマスクを外し、ズボンのポケットから替えのマスクを取り出して付け替えた。
別にマスクをつけなくても充分に整った顔立ちはしている。とは思うが彼の性格上顔を露出させたくないのだろう。
という事はこの館で彼がマスクをしていない姿を見たのは私だけか……なんて考えが頭に浮かび思わず失笑した。何考えてるんだ私は、大体見たのだって昨日合わせて5秒程度だ。
それでも四葉のクローバーを見つけた時のような、珍しい動物を見れたみたいなちょっとした特別感は味わえた。
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野菜 - 感想ありがとうございます！こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください！ (2019年6月27日 16時) (
レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです！切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：野菜 | 作成日時：2019年6月22日 13時
