思へどもなほぞあやしき逢ふことの ページ3
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『また伝説の事故死ドッキリやってよ』
「伝説なのは俺じゃなくて押見さん」
『あのライブはいつまでも語り継ぎたい』
「池ちゃんとAが上手いことやってくれたのも大きいな」
『あの時の池ちゃんの悪い顔と言ったら』
「関町にAちゃん！お疲れ」
「おー」
『濱くん！お疲れさま』
「Aちゃん今日飲みに行かん？」
『行く！！』
「え、俺は？！」
「関町はまた誘うたるから」
濱くんに誘われたことが始まりだった。
「見取り図のリリー」
「Aさんお会いしたかったんすよ！」
『そうなの？』
「濱家さんが東京の同期に可愛い子おるって」
「おいリリー」
『え〜濱くんそんな事言ったの？』
濱くんが連れてきた大阪の後輩、見取り図のリリーくん。
「Aさん」
『んー？』
「僕らが東京進出したら、付き合ってください」
『またそんな事言って〜』
「本気です。覚えといてください」
私が大阪に行った日に飲みに誘うとそんな事を言われた。
いつも似たようなことを言われていたし、モテるのはもう十二分に知っていた。
だから、いつもの冗談だと思ってた。
だから、本気にしないと決めていた。
そんな何年も前の会話。
すっかり記憶の片隅に置き忘れていたある日。
大阪の複数の劇場で出番があり、1ヶ所目の劇場に入ると盛山くんに会った。
「おはようございます」
『おはよ、これあげる』
「えぇ！ありがとうございます！」
新幹線に乗る前、寝ぼけてたのかコンビニで買ったコーヒーがブラックだった。
「Aさんに貰ろたってリリーに自慢しますわ！」
『コーヒー1本で自慢されるの恥ずかしいって』
なんて盛山くんと話していると背後に気配を感じ振り向くと、少し不機嫌そうなリリーくんが
「Aさん、僕にはないんすか？」
『リリーくんおはよ、ごめんね1本しか、、』
大真面目に返事をする。
「じゃあ夜、飲みに連れてってください」
「ずるいわ、俺も行く」
「モリシはコーヒー貰ったやろ」
2人を宥め、リリーくんと夜飲む約束をして1日がはじまった。
多分コーヒーを渡していてもリリーくんには誘われていたんだろうけど。
「東京に移籍する事になりました」
『そうなの？おめでとう！』
「約束、覚えてます？」
『約束？』
「東京進出したら付き合ってくださいっていう」
リリーくんの言葉を聞いて記憶の蓋が開いた。
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作者名：裕 | 作成日時：2022年3月12日 12時
