コイノウタ弐 (ページ17)

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吉野の里にふれる白雪ページ17

珍しく昼過ぎに仕事が終わった今日。このままAの家に行くと連絡済み。

「浮かれとんな」

楽屋の扉を開けたタイミングでモリシが呟いたけど聞こえんかったフリをして局を後にする。可笑しいくらいに足取りが軽い。

自分ン家の鍵と並んでぶら下がるAン家の鍵を持つ。ゆっくりドアノブを回して中の様子を伺う。シン、としとるけど靴はあるし時間言っとるからおるのは間違いない。

「A〜」

名前を呼んでリビングのドアを開けると、南向きの窓に背を向けて三角座りして膝に顎を乗せ、、閉じてた目を開け

『将企くん、おかえりなさい』

ゆっくり微笑んで目を細める。たまらなく愛おしい。

「ただいま」

『コーヒー、飲む？』

「貰うわ」

いつもの位置に荷物を置いて立ち上がって身体を伸ばすAの元に行く

「ん、あったかい」

ギュッと俺の腕の中に収まったAの髪に顔を埋める。

『日向ぼっこしてたからね』

「日向ぼっこやったん？あれ」

『うん。背中がポカポカするの気持ちよくて、冬のお休みの日はよくやってるの』

一昨年の夏だったか。M-1効果で東京と大阪を行き来する多忙な日々に些細なことがキッカケで出会った。

俺をテレビに出てるからとか、芸人だからとか、そんなではなくちゃんと1人の人間として接してくれたAを好きになるのに時間はかからなかった。ただ、忙しかったのと絶対に付き合いたかったから告白に至るまでには時間をかけた。

「コーヒー飲みながら日向ぼっこしますか」

『しますか！』

嬉しそうに俺を見上げて、座っててと言ってキッチンに向かった。

「ほんまに気持ちいいな、ポカポカして」

『外からも中からもあったまって最高だね』

こういう過ごし方もええな、と思えるのはAとだからなのか。でもやっぱり久しぶりにゆっくり2人の時間があるんやから、、

『コーヒーおかわり？』

「いや、」

隣に座るAをジーッと見つめると恥ずかしそうにして

『見過ぎです』

あたたかい手で目を隠された。

「あかんの？」

『あかんの』

目を覆う手を掴んで引っ張り抱きしめる。

「なんでそんな可愛いん？」

『、、お世辞言っても何もでないよ？』

「彼女にお世辞言わんやろ」

腕の中で笑うAに唇を落とす。

「たまには明るいとこでするん、どう？」

部屋着のパーカーの中に手を入れると『えっち』と言いながらも受け入れてくれた。年末年始、また忙しなるから可愛い顔を沢山目に焼き付けておこう。