コイノウタ (ページ44)

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音に聞く高師の浜のあだ波はページ44

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「A先生、熱あるかも」

「体温測ってみて？」

中学の養護教諭、いわゆる保健の先生になって5年。

自分が中学生の時に心の拠り所だった保健の先生。私もそんな存在になりたいと嫌いだった勉強を頑張った。

「A先生、ベッド借りるな」

「清水先生、ここは休憩所じゃないんですよ」

美術の清水先生は授業がない時間にたまにやってきて睡眠を取っている。

「怒ったら可愛い顔が台無しやで」

いつもこんな感じで、しかも爽やかと来ている。更にはサッカーが上手い。男女問わず人気の先生。

ベッドに入って目を閉じる清水先生を尻目に、委員会の準備をする。

「よぉ寝れたわ、ありがとう」

「そのうち怒られますよ」

「大丈夫」

手をひらひらさせて保健室を出て行く。もし…変な噂が出たらどうするつもりだろう…

相変わらず保健室に来ては寝る清水先生。

「先生起きて下さい、次授業ですよね？」

今日は珍しくチャイムが鳴っても起きない先生を起こしにベッドに近づく。

「せんせ…！きゃっ！」

清水先生の寝ているベッドに倒れ込む。え、何？どういう状況？

「A先生」

「あ、あの、」

「シーっ。知っとる？」

横になってる清水先生の胸に頭を預ける状態で、さすがにドキドキしてしまう…

「な、何を、ですか」

「最近の生徒たちの噂」

「噂、ですか」

「俺とA先生は付き合っとるって」

「え…うそ…」

恐れてた事態になってる…

「嫌なん？俺と噂になるの」

清水先生の顔が見えないからどんな表情してるのかわからない。どういう意味なの？

「あ、あの、授業、始まりますよ」

「俺は正直ラッキーやなって思ったんよ」

私の言葉を無視して話を続ける清水先生。言葉の意味が全然理解できない。

「なんで、、」

「A先生のこと好きやから。嫌でも俺のこと意識するやろ？噂されたら」

「わ、わからない、、です」

「なんでなん？俺ばっかり好きなん嫌やわ…ま、今日はここまでにしとくな。授業始まってまう」

私のことを捉えていた腕が離れて、立ち上がる。

「…真っ赤やん」

「っ！」

ベッドから身体を起こした清水先生は嬉しそうに笑って私の前に立つ。

「俺の彼女になって後悔はさせんから、考えといて。な？」

頭をぽんぽんとされ、「じゃ」と保健室を出て行った。

鏡を見ると、真っ赤な顔の自分が映る。

「…悔しい」

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