コイノウタ (ページ21)

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われても末にあはむとぞ思ふページ21

瀬をはやみ岩にせかるる滝川の Aside

この一枚の札は私のお守り。

「われても末に会わんとぞ思う、、」

渡仏前に実家で見つけた百人一首。寂しい時はこの札をギュッと握った。再会できるよう願って

自分から待たないでと連絡先も消して貰った。それなのに会いたい、待ってて欲しいなんて。自分勝手だなと自嘲する。

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「あの頃の私、弱かったね」

7年前に一目惚れして決めたこの、アパルトマンの窓からパリの街並みを眺める。

寂しくて眠れなかった日、悔しくて泣いた日、褒められてひとり微笑んだ日。

このアパルトマンは優しく包み込んでくれた。

「ありがとう」

休日は将企くんの姿を探すかのように美術館を巡った。

それも終わり。

明日、帰国する。

長年の夢だった自分のお店をついに開く。先月一時帰国して物件を決めた。オープンはまだ先だけど楽しみで胸が躍る。

「クッキー美味しかったよ」

オープンして半年。有難いことに少しずつ常連さんが増え、忙しいながら楽しく過ごしていたある日の午後。

「すみません、テレビ大丈夫ですか？」

お店のドアが開いて背の高い男の人が目に入る。この人…

「大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

少しすると盛山さんのあとに、、将企くんが。

泣かないようにポケットに入れたお守りを握って「こんにちは」と笑うと、将企くんは一瞬だけ驚いた表情を見せた。

「キラキラしとるな、」

「ショーケースが宝箱みたいですねぇ」

「大好きな人に私は宝物だって言われたのが嬉しかったので、キラキラしたお菓子をメインに作ってます」

「素敵な話！」

「ありがとうございました」

お店が静かになってすぐだった。

「A」

戻ってきた将企くんは、少し泣きそう。

この声に名前を呼ばれるの大好きだった。
鼻の奥がツーンとする

「夢叶えたん凄いな、おめでとう」

「ありがとう」

「ほんまにパステルのグリーンやん」

「覚えててくれたんだ」

「忘れへんよ、忘れた事なかった」

ショーケースごしに将企くんの温かい手が頭に乗る。

「え、、」

「おかえり。ずっと待っとった」

「それって、」

「今もAは俺の宝物で、大好きな人やから」

もし、大好きな人と離れ離れになってしまっている人がいたら伝えたい。

願い続けていれば

川を流れる水が岩にぶつかって離れてもまた会えるように

必ず再会できると

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