4章11話 歪んだ子供の ページ35
*
｢A｣
女の声がした。
数メートルほど先に、2人の男女が立っている。
私は立ち止まる。
彼らは、1歩私に近寄る。
｢A｣
男の声がした。
彼らは、また1歩、私との距離を詰めてくる。今度は、私が1歩後ずさって口を開いた。
｢お父さん、お母さん。久しぶりね｣
暖かい思い出なんて、ひとつも無かった。
私は欲張りだから、それが愛だとわかる愛が欲しかった。
｢A、そのはしたないピアスは何？｣
母が口を開いた。
その声音は、少し掠れているような気もする。
私はそれを、鼻で笑った。
｢洒落たピアスでしょう？｣
自分の左耳を触ると、ぬるり、と生暖かい感触。
ピアスを刺した時の傷口から血が流れている。
オーラを絶え間なく流していると言うのに、未だに止血ができていないようだ。
(やっぱり、
両親は、思い切り顔を顰めた。
監視、使用人、見張り、マフィアの構成員。
全員倒してここに来た私が、どうして毒や洗脳の影響を受けていないのかを察したらしい。
｢A、子供のわがままは終わりよ。貴女はもう、大人なのよ｣
｢随分と強くなったみたいだな。だが、お前だけでできる事には限界があるはずだ｣
諭すような口調になった彼女らを見て、私はふと察した。
(あぁ、私が殺したいと思ってるみたい)
私が両親を殺す気なのだとしたら、両親もそれ相応の対応ができる。
何か策があるのだろう。
だから、その策を使う前にまずは諭して説得を試みる。
そういう事だ。
｢何か勘違いをしているみたいだけど、なにも私は、2人を殺したいわけじゃないの｣
だから、まだマフィアのメンバーも、屋敷の使用人も、誰1人として殺さなかった。
まだ、準備が完璧ではないから。
潰しても潰しても、すぐに湧く。
それでは駄目だ。
───最近、ベリーアー組も全盛期に比べると、随分勢力が弱まったとは思わない？
なんて、口には出さないけど。
｢私はね、ただ、2人と“本当の家族”になりたいだけなの｣
｢……っ！！｣
その言葉だけを吐き捨てると、私はすぐに両親の前を後にした。
数秒ほどして、両親が動き出した気配があった。
しかし、その数秒は、私を一時的に逃がすには、十分な時間でもあった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あめ。(プロフ) - 推しは神さん» うああ本当にありがたいお言葉です……！！ イルミとの関係や家の部分は1番心がこもっている部分なので嬉しいです。すごくやる気が出ました……ありがとうございます……！！！ (2021年8月4日 21時) (
レス) id: 9321659db3 (このIDを非表示/違反報告)
推しは神 - とても面白いです！イルミとの関係や家のことなど続きが気になります！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2021年8月3日 17時) (レス) id: d035d348ec (このIDを非表示/違反報告)
あめ。(プロフ) - カナデさん» でたぁー、と一瞬の退場、という文面を見て、思わず笑っちゃいました。笑笑 嬉しいです、ありがとうございます！！ 更新頑張っていきます！ (2021年6月29日 22時) (レス) id: 9321659db3 (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - で、でたぁー！俺じゃなきゃ見逃しちゃうね！！でも一瞬の退場！笑。最近めっちゃハマってます。更新頑張ってください！ (2021年6月29日 16時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
あめ。(プロフ) - 赤とんぼさん» ｱｱｱ凄く嬉しいです……！！ ありがとうございます。更新頑張ります！！ (2021年6月23日 18時) (レス) id: 9321659db3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あめ。 | 作成日時：2021年6月15日 23時
